日々の食事を少し見直すだけで、血圧のコントロールに役立てられる可能性があります。本態性高血圧の方にとって、塩分管理は生活習慣改善の基本となる取り組みです。このセクションでは、減塩の具体的な方法や、カリウムをはじめとした栄養素の活用法など、毎日の食卓から実践できるアプローチについてご紹介します。無理なく続けられるヒントを取り上げていますので、参考にしてみてください。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
本態性高血圧を生活習慣で下げる方法①:食事と塩分管理
このセクションでは、本態性高血圧(明確な他の病気が原因ではなく、塩分の摂りすぎや加齢・遺伝・生活習慣などが複雑に絡み合って起こる高血圧)を下げるうえで、日々の食事と塩分管理がどのように関わるかについて解説します。生活習慣の見直しは薬だけに頼らず血圧をコントロールするための基本となるため、まずは毎日の食事の面から理解を深めていきましょう。
塩分を減らすことが血圧管理の第一歩
食塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取は、血圧を上昇させる最大の環境要因の一つとして知られています。塩分に含まれるナトリウムには身体(血液中)に水分の蓄積を引き込む性質があり、巡る血液の総量を増やすことで血管の壁にかかる圧力を高めます。このような血管への負担(高い血圧)が慢性的に続くと、血管の壁が次第に厚く硬くなって弾力性を失い(動脈硬化)、高血圧の状態がさらに固定化・悪化しやすくなります。
日本人の食塩摂取量は和食の文化もあり世界的に見ても多い傾向があります。厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病予防のための成人の食塩摂取目標量は1日あたり男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。さらに日本高血圧学会等の指針では、すでに高血圧と診断されている方に対して1日6g未満の減塩が推奨されており、日常生活においてかなり意識的な塩分管理が求められます。
具体的に食塩を減らす工夫としては、まず、しょうゆやみそ、ソースなどの調味料を料理に直接かけすぎないことが基本です。卓上に調味料を置かず、食べる直前に少量「つける」スタイルにする工夫も効果的です。また、汁物(みそ汁やスープ)は1日に1杯程度を目安にし、具材を多めにして汁の絶対量を減らすことで塩分摂取を大きく抑えやすくなります。加工食品(ハム・練り物・カップ麺など)や外食は想像以上に塩分が多く含まれているため、購入時に「栄養成分表示」で食塩相当量をチェックし、利用頻度や量を意識することも重要です。
なお、塩分を急激にカットすると味覚がついていかず挫折しやすいため、少しずつ薄味に慣れていくことが長続きさせるコツです。出汁(だし)の旨味や、酢・レモンなどの酸味、ハーブやスパイス・香味野菜などを上手に活用すると、塩分が少なくても風味豊かで満足感を得やすくなります。
カリウムを意識した食品選びで血圧をサポート
塩分を減らす「減塩」と同時に、カリウムを意識的に摂る「減塩サポート」も血圧管理に大変役立つと考えられています。カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑え、尿と一緒に体外へスムーズに排出させる強力な作用を持っており、血管を緩めて血圧の上昇を抑える働きが期待されています。生野菜や果物、海藻類、大豆製品・豆類などに豊富に含まれており、日々の食事に取り入れやすい栄養素です。
また、カリウムだけでなくマグネシウムや食物繊維も同時に豊富に含む食品(アボカド・ナッツ類・バナナ・ほうれん草など)を組み合わせる食事アプローチは、相乗効果で血管の健康を保つために有用です。
ただし、腎臓の機能が低下している方(慢性腎臓病など)は、カリウムの摂取量に厳重な制限が必要な場合があります。腎機能が弱まるとカリウムが尿から排出されにくくなり、血中濃度が高くなりすぎて不整脈などの重大なトラブル(高カリウム血症)を引き起こす危険があるためです。腎臓の疾患をお持ちの方は、自己判断でカリウムの摂取量を増やす前に必ず主治医や管理栄養士に相談するようにしてください。
また、脂質の摂りすぎや清涼飲料水などによる糖質の過剰摂取も、肥満を介して血圧に悪影響を与えます。体重が増加すると、増えた体組織に酸素を届けるため心臓がより強く多くの血液を送り出す必要が生じ、血圧が跳ね上がりやすくなります。バランスの良い食事を心がけながら、肥満を予防・解消して適正な体重(標準的な目安としてBMI 25未満、理想としてはBMI 22前後)を維持することが、血圧管理の観点からも極めて大切です。
食事の見直しだけで血圧が一朝一夕で劇的に下がるわけではありませんが、数ヶ月単位での継続的な取り組みが長期的な薬の減量や合併症予防につながります。医師や管理栄養士と相談しながら、自分のライフスタイルに合った無理のない食事管理を進めていくことが望ましいでしょう。
まとめ
本記事では、本態性高血圧の基準値・下げる方法・コーヒーとの関係について、食事・運動・体重管理・血圧の数値の理解・治療目標値の確認といった多角的な観点から解説しました。本態性高血圧は自覚症状が乏しいまま進行することが多く、放置すると心臓や血管、腎臓などへの影響が懸念されます。日々の生活習慣を少しずつ見直し、定期的に血圧を測定することから始めてみてください。気になる症状がある方、または血圧の数値が高い状態が続いている方は、早めに内科や循環器内科に相談されることをおすすめします。
参考文献
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
厚生労働省「高血圧」
国立循環器病研究センター「高血圧について」
厚生労働省「飲酒 | 生活習慣病などの情報」
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
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