
海外へ出かけなくても、街の中で異国の文化や歴史に触れるだけで、ちょっとした旅行気分を味わえることがある。
港町・横浜には、そんな「小さな海外旅行」を楽しめる場所がいくつも残っている。
8月14日に公開された横浜が舞台のオリジナルBLアニメ『秘密の輪舞曲(ロンド)』第5話「小さな旅のように」でも、大学生の朝倉悠真と、イタリア出身の実業家アレッサンドロ・ロッシが百貨店のイタリアフェアを歩く。
ワインやチーズ、パンとオリーブオイル、エスプレッソ。海外旅行ではないものの、ロッシと一緒に初めての味や文化に触れる時間を、悠真は「小旅行みたい」と感じていく。
作品に登場するイタリアフェアは物語上の設定だが、「横浜でイタリアを感じる」という視点で街を歩いてみると、実際の歴史につながる場所がある。
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■ 本当にイタリア領事館があった「イタリア山」
JR石川町駅から坂を上って約5分。山手の丘にあるのが「山手イタリア山庭園」だ。
「イタリア山」という名前は、単にイタリア風の庭園だから付けられたものではない。
この場所には1880年から1886年まで、実際にイタリア領事館が置かれていた。その歴史から「イタリア山」と呼ばれるようになったという。
現在の庭園は、イタリアで多く見られる庭園様式を参考に、水や花壇を幾何学的に配置。高台のテラスからは、横浜ベイブリッジやみなとみらい方面を眺めることもできる。
2026年は日本とイタリアの国交樹立160周年にあたる。遠い国の文化としてだけではなく、日本とイタリアが長い交流を重ねてきたことを感じながら歩いてみるのも面白い。
■ 外国人住宅の暮らしを伝える「ブラフ18番館」
庭園内には、無料で見学できる西洋館もある。
その一つ「ブラフ18番館」は、関東大震災後に建てられた外国人住宅。かつてオーストラリアの貿易商が暮らし、その後はカトリック山手教会の司祭館として使用されていた。
白い壁、フランス瓦の屋根、ベイウィンドウ、鎧戸、サンルームなど、当時の洋風住宅の特徴が残されている。館内では、大正末期から昭和初期にかけての外国人住宅の暮らしが再現されている。
海外の文化を体験するというと食事やイベントを思い浮かべがちだが、「その時代の人がどんな家で暮らしていたのか」を見ることも、旅先で街を知る楽しみの一つだ。
■ 「外交官の家」で明治時代の国際交流を感じる
もう一つの西洋館が「外交官の家」。
1910年、明治政府の外交官・内田定槌の邸宅として東京・渋谷に建てられ、1997年に現在の山手イタリア山庭園へ移築復原された。国の重要文化財にも指定されている。
設計はアメリカ人建築家J.M.ガーディナー。建物にはアメリカン・ヴィクトリアンの影響が見られ、館内には食堂や客間、寝室、書斎などが再現されている。
イタリア領事館が置かれていた土地に、アメリカ人建築家が設計した日本人外交官の住宅が立つ。
一つの場所にいくつもの国の歴史が重なっているところも、開港都市・横浜らしい。
■ 2~3時間あれば山手から元町まで
山手イタリア山庭園だけで終わらず、そのまま山手の西洋館や元町まで歩いてみるのもいい。
横浜市の公式観光サイトでも、山手西洋館から外国人墓地、港の見える丘公園、元町を巡るコースを「2~3時間」のモデルコースとして紹介している。
さらに足を延ばせば横浜中華街も近い。
イタリアに始まり、西洋館を歩き、中国の食文化が集まる中華街へ。実際に国境を越えるわけではないが、半日の散歩でも街の風景や文化は次々に変わっていく。
『秘密の輪舞曲』の悠真が百貨店のイタリアフェアを「小旅行みたい」と感じたように、旅らしさは必ずしも移動距離だけで決まるものではない。
知らなかった歴史を知る。いつもと違う建物に入る。普段とは違うものを食べてみる。
そんな小さな体験を重ねながら横浜を歩いてみれば、いつもの休日が少しだけ「旅」に変わるかもしれない。
■ 山手イタリア山庭園
所在地:横浜市中区山手町16
開園時間:9:30~17:00
アクセス:JR「石川町駅」元町口から徒歩約5分
園内施設:外交官の家、ブラフ18番館
※外交官の家、ブラフ18番館は入館無料。休館日はそれぞれ異なるため、訪問前に公式サイトで最新情報を確認したい。

