20〜40代の“女性”は要注意?「多発性硬化症」を疑うべき“3つの症状”

20〜40代の“女性”は要注意?「多発性硬化症」を疑うべき“3つの症状”

多発性硬化症(MS)は、女性に多く見られる指定難病の神経疾患です。免疫システムが自分自身の神経を攻撃してしまうこの病気には、女性ホルモン「エストロゲン」が深く関わっていると考えられています。日本国内の患者さんの傾向や、妊娠・出産との関係性など、女性がMSを理解するうえで大切な基礎知識をわかりやすく解説します。

松繁 治

監修医師:
松繁 治(医師)

経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医

多発性硬化症 (MS) と女性の関係:なぜ女性に多いのか

多発性硬化症(MS)は、女性に多く見られる指定難病の神経疾患です。日本国内でもその傾向は明確で、患者さんの性別比は女性が男性を大きく上回っています。このセクションでは、なぜMSが女性に多いのか、その背景にある要因や性ホルモンとの関係について詳しく解説します。

女性に多い背景:免疫と性ホルモンの関係

多発性硬化症は、自己免疫疾患のひとつです。自己免疫疾患とは、本来は外敵(ウイルスや細菌)から身体を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身の組織を敵とみなして攻撃してしまう病気です。MSの場合、攻撃の対象となるのは脳や脊髄などの神経細胞を覆う「ミエリン鞘(髄鞘:ずいしょう)」という膜です。電線の被膜に例えられるこのミエリン鞘が壊される(脱髄)と、神経の電気信号がスムーズに伝わらなくなり、手足のしびれや運動障害、目にかすみが出るなど、さまざまな症状が表れます。
女性は男性に比べて、自己免疫疾患全般に罹りやすいことが知られています。その主な理由のひとつが、性ホルモンの影響です。代表的な女性ホルモンであるエストロゲンは、免疫反応を調節し自己免疫疾患のリスクに関わると考えられています。これは感染症への抵抗力を高める反面、免疫が過剰に働いてしまうリスクも生じさせます。MSをはじめ、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)など、多くの自己免疫疾患が女性に多い背景には、このホルモンと免疫の関係が深く関わっていると考えられています。
また、ホルモンバランスの変化は病気の勢い(病勢)にも影響を与えます。エストロゲンが高水準になる妊娠中にはMSの症状が落ち着きやすい(寛解する)一方、出産後にホルモン量が急減することで一時的に再発しやすくなる傾向も報告されています。

日本における女性MS患者さんの現状

厚生労働省の特定疾患医療受給者証のデータ等によると、日本におけるMSの患者数は増加傾向にあり、現在では約2万人と推定されています。そのうち女性が占める割合は男性の2〜3倍程度とされています。発症年齢については、20〜40代の思春期から青年期・壮年期の女性に多く見られることが特徴で、仕事や家事、育児など生活が忙しい時期と重なることも、診断や治療計画を複雑にする要因のひとつです。
若い女性がMSを発症した場合、妊娠・出産との関係も重要なテーマとなります。MSという病気自体が不妊の原因になったり、胎児に直接的な悪影響を及ぼしたりする可能性は低いとされています。しかし、MSの治療で用いられる「再発予防薬(疾患修飾薬)」や急性期治療薬の中には、妊娠中・授乳中の使用が推奨されないものや、妊娠前に計画的な休薬が必要な薬剤もあります。そのため、妊娠を希望する場合は決して自己判断で服薬をやめず、主治医(神経内科医)とライフプランに合わせた最適な治療方針を事前に相談することが極めて重要です。
さらに、日本のMSの診断と治療は近年大きく進歩しています。かつて日本人に多いとされていた「視神経脊髄型」という病態は、近年の医学的知見のアップデートにより、MSとは異なる「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」という別の病気として明確に区別されるようになりました。これにより、現在の日本の診療現場では、欧米同様の標準的なMSに対する適切なガイドライン(日本神経学会等の診療ガイドライン)に沿った、より精度と専門性の高い診断と治療が行われています。

まとめ

多発性硬化症(MS)は、女性に多く見られる中枢神経の自己免疫疾患であり、初期症状が多様なために診断に時間がかかることもあります。視神経炎や感覚障害、運動障害などの初期サインを見逃さず、早めに神経内科を受診することが大切です。治療薬や定期検査などの費用は指定難病制度や高額療養費制度によって軽減できる部分もあります。気になる症状がある場合や治療の継続に不安を感じる場合は、まずは神経内科に相談することをおすすめします。

参考文献

厚生労働省「013 多発性硬化症/視神経脊髄炎」

難病情報センター「多発性硬化症(指定難病13)」

国立精神・神経医療研究センター「多発性硬化症とは」

日本神経学会「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。