バルトリン腺嚢胞の初期は痛みがほとんどなく、「片側だけ膨らんでいる」「下着を着けたときに違和感がある」といった軽微なサインにとどまることが多いです。そのため、自覚のないまま過ごしてしまう方も珍しくありません。嚢胞が膿瘍へと変化するときにはどのような症状の変化が現れるのか、早期発見のために知っておきたいポイントを、日常生活の動作と結びつけながら具体的に確認していきます。

監修医師:
西野 枝里菜(医師)
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医
バルトリン腺嚢胞の初期症状を知る
バルトリン腺嚢胞の初期症状は非常に軽微であることが多く、痛みもほとんどないため見落とされやすいのが実情です。身体のどのような微細な変化に気づいたタイミングで受診を検討すべきか、具体的な特徴を確認していきましょう。
初期段階で現れやすいサイン
バルトリン腺嚢胞の初期症状として最も多く見られるのは、腟の入り口付近(特に時計の5時・7時の方向にあたる左右どちらかの片側)に生じる小さな膨らみやコリコリとした違和感です。嚢胞が形成されはじめたばかりの段階では、指で触れるとパチンコ玉や大豆ほどの弾力があるやわらかい出来物(水ぶくれのような感触)として触れられます。初期は細菌感染を伴わないため痛みがほとんどなく、かゆみも伴わないことが多いため、「気になるけれど痛くないから大丈夫」と放置されやすい傾向があります。
日常生活においては、椅子に座ったときや自転車のサドルに乗ったとき、あるいはタイトなズボンや下着を着用した際に締め付けられる違和感が増すことが初期の重要なサインのひとつです。また、シャワーや入浴時にデリケートゾーンを洗う際、ご自分で直接触れて「片方だけ膨らんでいる」と気づくケースも多く見られます。
嚢胞が少しずつ大きくなるにつれ、単なる違和感からしっかりとした圧迫感や挟まるような不快感へと変化します。基本的に左右どちらか一方だけに症状が現れる(片側性)というのも大きな特徴です。左右で見た目や触感の形に明らかに差が出ていると感じた場合は、早めに婦人科でのチェックを受けることが大切です。
嚢胞から膿瘍へ進行するときの変化
無症状だった嚢胞に大腸菌やブドウ球菌などの細菌が入って感染を起こし、「バルトリン腺膿瘍(のうよう)」へと進行・移行すると、症状は急劇に悪化します。それまでの無痛状態から一転して、患部が赤く大きく熱をもって腫れ上がり、指で軽く触れるだけでも飛び上がるような激痛(自発痛・触痛)が襲うようになります。歩く、座る、排尿するといった日常の基本的な動作すら困難になることも珍しくありません。進行に伴い、37〜38度台の発熱や全身のだるさ(倦怠感)を伴うこともあり、日常生活への支障が非常に大きくなります。
さらに症状が進むと、溜まりすぎた膿の圧力によって皮膚が薄くなり、自潰(じかい:皮膚を突き破って自然に弾けること)して破裂することがあります。このときに大量の膿や血交じりの分泌液が排出されるため、一時的に圧力が下がって激痛は和らぎます。しかし、根本的な出口の詰まりや炎症が治ったわけではないため、自己判断で放っておくと非常に高い確率で近いうちに再発を繰り返します。
膿瘍へと悪化してしまうと、抗生剤の服用や医療機関での切開・排膿処置(場合によっては袋の出口を作る造袋術)が必要となり、治療の負担も大きくなります。そのため、痛みのない「嚢胞」の段階で受診し適切に対応しておくことが、劇痛を伴う膿瘍への進行を防ぐうえで極めて重要です。軽い違和感であっても放置せず、早めに産婦人科・婦人科を受診して専門医の診察を受けましょう。
まとめ
バルトリン腺嚢胞は、女性に見られる疾患のひとつですが、適切な診断と治療によって改善が期待できます。初期症状は軽微であることが多く、「気にならないから大丈夫」と思ってしまいがちですが、放置することで膿瘍へと進展したり、症状が慢性化したりするリスクがあります。デリケートな部位の症状であるため、受診への抵抗感を感じる方もいるかもしれません。しかし、産婦人科・婦人科の医師は日常的にこのような疾患に携わっており、適切なサポートを受けることができます。気になる症状があれば、ひとりで抱え込まず、まずは婦人科への受診を検討してみてください。
参考文献
日本産科婦人科学会「産婦人科 診療ガイドライン ―婦人科外来編2020」国立成育医療研究センター「女性の健康総合センター」
厚生労働省「健康・医療高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 「子宮頸がんになる」とどんな『しこり』が現れるのか?しこり以外の症状も解説!
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