ICL手術のリスクを正しく理解しよう!

ICL手術は安全性の高い手術とされていますが、手術である以上、いくつかのリスクがあります。リスクを正しく理解して検討できるように、ICL手術特有の合併症リスクや、術後に起こり得る見え方の変化を確認しておきましょう。
合併症のリスク
まず、ICL手術にはまれに感染症や合併症が起こるリスクがあります。
例えば、切開創から細菌が侵入して炎症を起こすと、眼内炎を発症する可能性があります。
眼内炎とは強い痛みや視力低下が急に起こる病気で、発症する確率は約0.02%(およそ1/6,000件)と報告されています。
また、ICL手術でレンズを挿入する位置はピントを合わせる役割を担っている水晶体のすぐ前で、レンズが水晶体を圧迫したり、レンズによって目の中を満たしている液体(房水)の流れが変わったりすることで白内障発症リスクが上がる可能性があります。
近年は、技術の進歩と改良によって房水の流れを妨げにくいホールICLが使われるようになり、白内障の発生率は0.49%と改善されています。
さらに、眼内にレンズを入れるため眼圧上昇や緑内障のリスクにも注意が必要です。
ほかにも、術後の炎症や角膜内皮細胞の減少、レンズの位置ずれ、黄斑浮腫など、ICL手術後に起こり得る合併症や副作用が報告されています。万が一トラブルが起きた際に適切に対処できるよう、どのようなリスクがあるのか知っておきましょう。
参照:『ICLの合併症』(JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会))
術後に起こり得る見え方の変化
ICL手術後、視力そのものは良好でも見え方に変化を感じる場合があります。
代表的なのがハロー・グレア現象と呼ばれるもので、夜間や暗い場所で車のライトや街灯などの光がにじんで見えたり(ハロー)、眩しく拡散して見えたり(グレア)します。
多くの場合は時間経過で視力が安定してくると解消されるので、術後に見え方が変化するかもしれない点、症状が出た場合は医師に相談して経過観察が必要である点を理解しておくことが、安心につながります。
術後の過ごし方と注意点

ICLの手術自体は短時間で終わりますが、術後の回復をスムーズにし、合併症を予防して長期的な視力の安定を得るためには、術後の過ごし方が重要です。
ここでは、手術直後から日常生活に戻るまでに知っておきたい注意点や、万が一異常を感じた場合の対処法について解説します。
術後すぐに気をつけるべきこと
術後早期は、感染症を防ぎスムーズに回復するために細心の注意を払いましょう。特に傷口が完全に塞がっていない術後直後の期間は、目をこすったり触ったりしないことが大切です。手術当日はもちろん、翌日以降もしばらくは無意識に目に触れてしまわないよう十分意識してください。就寝時には保護メガネやゴーグルを着用し、眠っている間に目をこすらないようにすることも有効です。
ほかにも、次のような点に気を付けましょう。
処方された目薬をきちんと使用する
洗顔や入浴の注意点を守る
運転やパソコン作業の注意点を守る
点眼薬は感染予防や炎症抑制のために重要です。医師の指示に従い、頻度と回数を守って使用し、自己判断で中断しないようにしましょう。
また、術後の洗顔やシャンプーの注意点、職業や生活習慣に合わせて運転やパソコン作業の注意点なども確認し、目を清潔に保つようにしましょう。
長期的な視力安定のために必要なこと
手術後は、視力がすぐに安定するわけではありません。術後の視力を長期的に安定させ、良好な見え方を持続するには、眼科受診を継続することが推奨されます。
まず、医師が指定する定期検診は指示どおりに受診しましょう。
ICL手術後は通常、翌日検診から始まり1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後といったスケジュールで術後検診が行われます。この間に問題がなければ術後の診察の頻度は落ち着きますが、その後も半年〜1年毎に視力や眼圧、レンズの状態、角膜の状態などを確認することで、トラブルの早期発見と対処が可能です。見え方が安定していても受診は欠かさないようにしましょう。
また、処方された点眼薬は症状が落ち着いてきても自己判断で途中でやめない、できるだけ目を強くこすらない習慣を心がける、目の乾燥を防ぐ、激しい運動やアイメイクは医師と相談のうえ再開する、といったことを意識するのもポイントです。
これらを意識することで、ICL手術後も長期的に快適な視力を維持できるでしょう。
異常を感じたときの対応
万が一、術後に何かおかしいと感じる症状が現れたら、自己判断で様子をみることはせず、速やかに眼科を受診することが大切です。
具体的には、次のような症状に気を付けましょう。
強い目の痛み
急激な視力低下
瞼の腫れ
大量の目ヤニ
目の充血や異物感
ハロー・グレア現象の悪化
こうした異常や違和感は次回の検診日まで待たずにクリニックに連絡し、医師の診察を受けることが安心につながります。

