
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、『【復讐決行】3000万強奪旦那と浮気相手を地獄に叩き落してやりました』をはじめ、“サレ妻”や“不倫”“復讐”などをテーマにした作品を多数創作しているミロチさんの『余命宣告不倫 純愛ぶってるけど、それただの浮気だから』をピックアップ。
本記事では、単行本が好調で話題を集めている本作についてミロチさんにインタビューを行い、創作した経緯やストーリー展開で意識したポイントなどを語ってもらった。
■“余命宣告”された夫が最期に願うことは…不倫⁉

ある日突然、夫・颯太(35歳)から“癌が見つかり、医者から余命半年と宣告された”と告白を受けた妻・葵(32歳)。受け入れがたい現実に混乱しながらも、颯太の余命を少しでも延ばすため、ストレスのない生活を送ってもらおうと思ったのだが…。颯太に「何かやりたいことある…?」と聞いてみると、「初恋だった美織ちゃんと付き合いたい」と衝撃の願望を口にしたのだった。
葵は“不倫がしたい”という夫のバカげた願いに動揺したが、恋人時代に大病を患った母と幼い妹を支えてくれた颯太にずっと恩を感じている中で、最期の願いを無下にはできず、モヤモヤを抱えながらも願望を受け入れることに。
その日以来、金遣いが荒くなり、ヘアスタイルや服装が派手になっていく颯太。人が変わったような夫を前に「少しでも長生きしてくれるなら…」と耐え続ける葵だったが――。後に明かされる衝撃の事実によって、制裁を決意。“余命半年”を宣告された夫の不倫と、妻の逆襲劇に読者からは「稀に見るクズ男」「テンポよくスカッとする!」などの声が寄せられている。
■作者・ミロチさん「余命宣告された夫から不倫したいと言われたら、許せるか」

――本作の“余命宣告”された夫が初恋の相手と不倫するという非常にインパクトのある設定はどのような経緯で生まれたのでしょうか?
“不倫”という本来は絶対に許容できないものを、どういった状況だったら許してしまうかをまず考えました。その時に、深い恩がある夫から余命宣告という極限状態で頼まれたら、受け入れてしまうのではないかと。また、私は二児の母でもあるのですが、子どもからよく「一生のお願い!」って言われるんですよね。この「一生のお願い」という言葉を、もし大人が本当の重みを持って真剣に口にしたらどう感じるだろうか…と考えを巡らせた結果、少し切ない物語になったのかもしれません。
――物語の骨組みはどのように作っていくのでしょうか?
まずは今お話しした「余命宣告された夫から不倫したいと言われたら、許せるか」という核になるアイデアをベースに、全体の構成を組みます。キャラクター設定はその後ですね。ざっくりとしたストーリーを決めてから、各キャラクターがどのように動き、どのような台詞を吐くかを細かく肉付けしていく感じです。
――設定自体は非常にトリッキーですが、同時に日常的なリアリティも感じられます。だからこそ読者が没入できるのだと思いますが、今回のストーリー描写で意識したことはありますか?
登場人物をあえて多くせず、少なめに絞りました。その上で、展開を二転三転させることで、読者を飽きさせずに物語へ引き込むことを意識しています。盛り上がるイベントを多めに組み込み、スピード感のある展開を心がけました。
――登場人物は限られていますが、一人ひとりのキャラクターが非常に濃いですよね。一冊の中にエッセンスが凝縮されているので分かりやすく、読者の感情が一層集中できる面白い作りだと感じました。ミロチ先生は“サレ妻”や“不倫”“復讐”などをテーマにした、フラストレーションを溜めた末に“スカッとする”作品を多く手がけていますが、こういった愛憎のドロドロをテーマとして描く理由はありますか?
もともと、仕事や家事の合間にこのジャンルの作品を好んで読んでいたんです。主人公が相手を成敗して“スカッとする”展開が、私自身のストレス解消にもなっていたんですよね。漫画を描くこと自体も好きなので、自分でもこうした作品を描くのが楽しくなり、出版社からお声がけいただいたことをきっかけに執筆するようになりました。
――読んでいてスカッとする気持ちよさと同時に、リアルな怖さも感じました。ミロチ先生自身はママ友などもいるかと思いますが、不倫というテーマと日常は完全に切り分けて考えているのでしょうか?それとも「日常的にあること」として描いていますか?
私自身の家庭は不倫とは無縁ですが、友人やママ友から、旦那さんに不倫された経験談などのトラブルを聞く機会は少なくありません。実は、前作『【復讐決行】』の第1話については、身近で見聞きしたお話をヒントにリメイクしている部分もあります。不倫の最中に事故に遭ってしまうという展開なども、現実にあったお話をベースにしたものです。
――ミロチ先生自身と作品の世界観が基本的にはかけ離れていることに驚きました。ちなみにミロチ先生が漫画家であることは、周囲のママ友たちも知っているのでしょうか?
漫画家であることは伝えていますが、ペンネームなどは伏せています。積極的に自分から作品の話をすることはありませんね。
――先生自身の周囲にはトラブルがなく、穏やかな生活を送っているからこそ、客観的に描けるのかもしれませんね。
友人たちのちょっとしたトラブル話を聞いて参考にすることもありますが、基本的には私の生活とは全くかけ離れたフィクションの世界の話だと思って描いています。
担当編集:補足になりますが、『余命宣告不倫』は一巻で約140ページの長編として、ミロチ先生が持っているエピソードや考えたものを膨らませながら、編集部でもさらに構成を一緒に考えて制作しました。ミロチ先生は長い物語を構成するのが非常に上手なので、単発の短編とは別に、改めて一巻ものの作品をお願いしたという経緯があります。ストーリー展開はもちろん、同級生の医者のような悪役や、主人公を応援する親友など、キャラクターの立て方も非常に長けていらっしゃいますね。
――確かにどのキャラクターも魅力的ですが、個人的にはインスタグラマーである不倫相手の女性が最も印象に残っています。非常にリアルで“ザ・女が嫌いな女”を煮詰めたような強烈なキャラクターですよね。
あの子については、私自身も思い入れがあって、サブストーリーも作れそうだと感じています。有名人と婚約しながら多くの相手と不倫するなど、あそこに至るまでにも様々な物語がありそうですよね(笑)。
――はたから見たら何でも持っているように見えるのに満たされない彼女の背景などは個人的にも興味があります。そんな彼女だけでなく登場人物一人ひとりのキャラクターが非常に立っていますが、これらは誰かを参考にしているのでしょうか?
基本的には、読者が一番共感しやすい性格をベースに据えて、そこに私好みの“癖”を加えて作っています。特に誰かをモデルにしているわけではなく、癖のあるキャラクターは思いつきや直感で生まれてくることが多いですね。
――キャラクターの内面だけでなく、表情の描写も非常にリアルで、ドラマや映画のワンシーンのような印象を受けました。実写化も期待できそうな作品ですが、作画の際に意識していることや、映像作品から影響は受けていることなどがあれば教えてください。
私自身、作画の工程が一番好きなんです。読者がページをめくった時にパッと目に飛び込んでくるような、インパクトのある表情を描くことを心がけています。ドラマよりもアニメをよく見ますね。ドラマはそれほど頻繁には見ませんが、単一の感情ではない“複雑な表情”を描くことが好きなんです。怒りの中にある悲しみなど…そうした人間味のある描写や、コマの前後などで緩急をつけた表現が、ドラマチックな印象につながっているのかもしれません。
――では、ミロチ先生のネタの仕入れ先は基本的にはSNSなどになるのでしょうか?
YouTubeが多いかもしれません。基本的には恋愛をピンポイントではなく広く人生相談を扱ったチャンネルの内容を膨らませたり、たまに女性同士のドロドロしたトラブルを扱うチャンネルなどもインプットしたりしています。ドラマを参考にすると、どうしても既視感が出てしまう気がするので、実際の悩み相談など、生の感情がぶつかり合うエピソードからインスピレーションを得ることが多いです。
――基本的には実生活で見聞きしたものをベースにはあまりしていないようですが、「一生のお願い」をはじめ、自身のお子さんの言葉や行動からはヒントを得ることも多いのでしょうか?
5歳と7歳になる子どもがいるのですが、少し言葉が巧みになってくる時期で、自分を正当化しようとする言い回しなどが、漫画に出てくる不倫夫の台詞のヒントになることがありますね(笑)。そうした日常のやり取りを反映させたり、「この台詞を言わせたらキャラの身勝手さが際立つかも」と思いついたりすることはあります。
――なるほど(笑)、確かに不倫夫の言動は幼さを感じます。そんな本作の夫は非常に身勝手ですが、子どもたちにとっては最後まで“良い父親”として描かれていますね。
現実には“夫としてダメな人は、父親としてもダメである”というケースも少なくない印象ですが、漫画の構成上、最初からお父さんが子どもに嫌われてしまうと、奥さんの離婚の決断が早まって物語が終わってしまうんですよね。物語を維持して先に進ませるためには、子どもから好かれているお父さんという設定にした方が、主人公の葛藤を生んで描きやすい、という側面があります。
――設定に整合性を持たせるための工夫なのですね。そのほか、ストーリー展開の上で調整した人物設定などはありますか?
芯が強い奥さんであれば、夫の身勝手な要求に対して即座に拒絶するでしょう。でも、主人公がそれを受け入れてしまう背景には、学生時代の夫との出会い方や、彼に対する恩義といった設定があります。こうした心理描写をさりげなく盛り込んで、うまく表現したいなと思いました。また、夫の浪費癖がエスカレートしていく様子などは、読者の皆様の憤りを煽るような演出として工夫しています。
――確かに日常ではあり得ないような設定でも、登場人物一人ひとりの言動に違和感がないため、納得して読み進めることができました。こうした描写は自然に生まれるものなのでしょうか?
そこは担当編集者の方と相談しながら、少しずつ修正を重ねて作り上げています。制作過程で生じる辻褄の合わない部分や、「本当に人間はこう動くだろうか?」という疑問点を一つずつ解消して、時間をかけて仕上げました。何度も丁寧に伴走してくださった担当編集の方には感謝しかありません。
――そうした丁寧な制作の甲斐あって、読者からはどのような反響がありますか?
「最後がスカッとした!」という感想をいただくことが一番多いですね。読者の皆様もカタルシスを求めて読んでくださっていると思うので、フラストレーションを溜めに溜めた末に解放されるという感情の起伏は、執筆時にも強く意識しています。
――確かに序盤から中盤にかけてかなり読んでいてフラストレーションが溜まりました(笑)。ミロチ先生自身は漫画を描く中で登場人物たちにイライラすることはないのでしょうか?
ないんですよね。私にとって作画をすること自体が最高のストレス解消になっているので、たとえ嫌なキャラクターを描いていても、楽しく執筆できています。
――今後はどのような作品にチャレンジしたいですか?
キラキラした王道の少女漫画を描くのは、自分には少しハードルが高いと感じているのですが(笑)、それ以外であれば様々なジャンルに挑戦したいです。もともとギャグ漫画も大好きですし、今回のように人間ドラマの機微を深く掘り下げるような、骨太な作品も描いていければと思っています。
――ミロチ先生の他ジャンルの漫画も読んでみたいです。最後に、本作の見どころを教えてください。
約140ページの長編ですが、一気に読み進めていただけるよう感情の緩急をしっかりつけて描いています。テンポの良さも評価していただいているポイントですので、最後までノンストップで読んで、大きな“スカッと感”でストレスを解消していただければうれしいです。また、世の旦那様方にもぜひ読んでいただきたいですね。反面教師にして、奥様を大切にするきっかけにしていただければと思います。
取材・構成・文=戸塚安友奈

