現役弁護士でありながらお笑い芸人として活動する、こたけ正義感氏。当初から知る人は、フリップを使った法律ネタをイメージするかもしれない。しかし、現在のこたけ氏は新時代の「スタンダップコメディ(漫談)」の旗手として注目を浴びている。
2024年からスタートしたスタンダップコメディショー『弁論』では、袴田事件や生活保護といったテーマを、一般人にも親しみやすい笑いに仕立て、YouTubeの期間限定配信で最大160万回再生を超えるなど、話題を呼んだ。
今年11〜12月に開催する『弁論2026』は全国4会場、総席数約1万2000席以上だという。東京会場に限れば最大収容人数は約8000人。単独公演としては日本のスタンダップコメディ史上でも類例をみない。
●YouTubeで大反響 ライブがチケット争奪戦に
こたけ氏がスタンダップに挑戦するようになったのは2024年4月から。最初は約80席の劇場だったという。
転機となったのは、その年末に開催した3回目の『弁論』だ。YouTubeで期間限定の無料配信をしたところ、約80万回再生された。このときの題材が「袴田事件」の再審無罪判決だった。冤罪という難しいテーマを一般人が楽しめるエンターテインメントに昇華させた話術が高く評価された。
そうした期待感の中で開かれた2025年の『弁論』では、東京会場1100席に対して、8000件以上の応募があり、チケットが争奪戦になった。生活保護基準の引き下げをめぐる「いのちのとりで裁判」を扱った内容も評判を呼び、YouTubeの再生回数は160万回を超えた。
こたけ氏の学生時代の卒業論文は「貧困は自己責任か」。弁護士になってからは、釜井英法弁護士の池袋市民法律事務所に所属し、街弁として幅広い案件に対応しながら、生活保護の申請同行や、炊き出しを兼ねた法律相談にも足を運んだ。生活保護はいわば、原点と言えるテーマだ。
ただし、ネタをつくるときに、「弁護士として社会的なメッセージを発しなくては」とは思っていないという。
「日本でスタンダップコメディというと、社会問題や政治批判というイメージを持たれがちですが、海外の人気芸人を見ても、『トランプ(大統領)が〜』みたいな内容がないわけではないけど、そこを軸にしている人は全然いないんです。自分のアイデンティティから来る内容を面白くしゃべっているだけ」
自身も弁護士というアイデンティティゆえに社会問題に関心が向きやすく、題材にすることが多いというだけで、メッセージありきのテーマ設定ではないという。
「もちろん、自分の中の価値観があるものもあります。でも、それを説得的に表現しようと思ってつくると、つまらなくなっちゃう。面白いネタをつくる目的でテーマを選んでいるし、難しいテーマでも面白いものがつくれる、笑ってもらえるということにやりがいを感じています」
2026年の年末には5回目の『弁論2026』が決定している。下北沢の約80席から始まったライブは2年半をかけて全国4会場、総席数約1万2000席以上の規模にまで成長した。特に東京会場の東京ガーデンシアターは最大収容人数約8000人のキャパシティを誇る。
ただ、ギリギリにならないと取りかからない性分だといい、まだ扱うテーマも決まっていないそうだ。
「箱だけが先に決まっていて、現時点では文字通り台本は1文字もできていません。とんでもない恐怖ですし、プレッシャーで息が詰まりそうです。ただ、世界にはスタンダップで万単位の会場を埋め、何十億と稼ぐコメディアンもいます。日本でももっとスタンダップを流行らせていきたいですね」
日本武道館やNetflixなどへと、夢は広がる。
【弁論2026】
11/4(水) 宮城県 東京エレクトロンホール宮城
11/11(水) 福岡県 SAWARAPIA 福岡県立ももち文化センター 大ホール
11/24(火) 京都府 ロームシアター京都 メインホール
12/4(金) 東京都 東京ガーデンシアター
※チケット情報、公演詳細は「弁論」公式HP(https://kotake-benron.com/)へ
プロフィール こたけ正義感(こたけ・せいぎかん)氏
本名・小竹克明。1986年、京都市生まれ。香川大法学部卒業、立命館大法科大学院修了。2012年に東京弁護士会に登録。芸人としてはワタナベエンターテインメントに所属し、17年デビュー。22年「ワタナベお笑いNo.1決定戦」準優勝。24年から始めたマイク1本のスタンダップコメデショー『弁論』が大きな話題を呼ぶ。YouTube『ギルティーチャンネル』は、登録者数50万人超。妻は修習同期の弁護士、2児の父でもある。

