
一番の働き者でやさしい人が患者に暴力をふるっていた。水谷緑(@mizutanimidori)さんの新作『暴力病院〜看護助手が精神科で見たもの〜』を紹介するとともに話を聞いた。
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承のうえ、お読みください。




※本作は著者の闘病体験を描いたコミックエッセイです。紹介している病状や治療の経過には個人差があり、医学的な見解を代弁するものではありません。気がかりな症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。
■精神科病棟の知られざるリアルを描く
精神科病棟で行われる暴力。話には聞いたことがあるような精神科のリアルな部分が漫画になった。本作を手がけるのは、『まどか26歳、研修医やってます!』や『こころのナース夜野さん』『私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記』などを描く、漫画家の水谷緑さんだ。
「『精神科ナースになったわけ』『こころのナース夜野さん』など精神科の漫画はいろいろ描きましたが、これまで描いたことがない切り口で、まだ伝えられてない暴力や支配について深掘りしてみようと思いました」と、水谷さんは制作の経緯を語る。
■ままならない医療現場と葛藤
病棟では、社会に戻りたいと奮起する患者や、生きる気力をなくした患者などが描かれる。朝はまず50人の患者を食堂に集めることから始まる。看護助手は、動ける人には声をかけ、動けない人の排泄処理をし、車いすに乗せて食堂へ移動する。日々を生きるだけで精一杯の人々は心を壊し、言葉が伝わらない人も多い。
本作を読むと、現場で働く人の気持ちも理解でき、正解がないことに行き場のない気持ちになる。「積極的に考えたいことではないですし、このテーマで1冊も描けると思わなかったのです」と水谷さんは明かす。しかし、「根気強く質問してくださった編集者さんのおかげで、思い出したり改めて考えられました」と、生み出すことが難しかった本作の制作過程を振り返る。
■暴力の奥にある事情と自己への問いかけ
作中では、精神科病院の患者を隔離し、管理する闇が描かれている。「暴力の批判は簡単ですが、どんな事情があるのかということを表現できればと思いました」と水谷さんが語るように、単なる告発にとどまらない。
「行き場のないのがリアルですが、頑張ってる医療者もたくさんいて変わってきてもいるので、悲観せず、ままならない世界のなかで、自分はどんな人でありたいか、どんなふうに他者と関わりたいか、考えるきっかけになればうれしいです」
暴力や支配はありふれている。あえて見てみることで、自分がどんな人間か見えてくるはずだ。もしも自分が主人公の立場になったら。現場の従事者になったら。さまざまな立場の目線で本作を読んでみてほしい。
取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)
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