「学校がすべてじゃない」──《井上咲楽》の不登校時代から学ぶ、自己肯定感が低いときの“心の支え方”

「学校がすべてじゃない」──《井上咲楽》の不登校時代から学ぶ、自己肯定感が低いときの“心の支え方”

揺れる気持ちを受け入れる──自己肯定感を守る日記の力

 井上さんが長く続けている習慣のひとつが「日記」です。特別なスキルや道具は不要で、誰でも実践できるシンプルな方法ですが、心理学の観点からも「自己理解や感情の整理に役立つ」行動として注目されています。ここでは、日記を記すことで期待できる3つの効果を紹介します。

(1)感情を外に吐き出せる
 ネガティブな感情を言葉に書き出すと、頭の中で渦巻いていた思考が整理され、客観的に自分を見つめ直しやすくなります。心理学の観点では「エクスプレッシブ・ライティング(感情表出の筆記)」という方法が知られており、思考や気持ちを文字化する行為はストレスの軽減や自己理解のサポートにつながると考えられています。

 重要なのは正しく書こうとしないこと。「〇〇がイライラした」「〇〇されて悲しかった」など、思ったことをそのまま言葉にしてみましょう。最初は「寝る前にひと言だけ」「今日いちばん心に残った出来事だけ」と小さく始めるのがおすすめです。無理なく続けるうちに、心が整い、自己肯定感を守りやすくなります。

(2)幸せを感じやすくなる
 日常のポジティブな出来事を書き留める習慣は、心理学の分野において 「カウンティング・ブレッシングス(counting blessings)」と呼ばれています。ありがたいと感じた出来事を定期的に記録する方法で、主観的な幸福感や心理的な安定につながる可能性があるとされています。

 日記には、「美味しいコーヒーを飲めた」「友人と少し話せた」といった小さな出来事を記すのがポイント。感謝を日記に書くことは、日常を前向きに乗り切るきっかけにもなります。
まずは「今日あった良かったことを3つ」書き出してみましょう。短い言葉でも続けることで、日々の幸せを意識しやすくなり、幸福感が少しずつ育っていきます。

(3)心の安定につながる
 心理学において、日記を書くことは「ワーキングメモリ」と呼ばれる認知の仕組みに良い影響を与えると考えられています。ワーキングメモリは作業や判断に必要な情報を一時的に処理する機能を持っているものの、感情や思考が過剰に溜まると容量が圧迫され、集中力が低下したり気持ちの切り替えが難しくなったりします。

 心の安定を意識したいときには、1日の終わりに「出来事」「感じたこと」「感情の強さ(%)」を簡単にメモしてみましょう。長文である必要はなく、3行程度で十分です。短い記録でも続けることで、思考の整理がスムーズになり、気持ちを落ち着けやすくなります。

【まとめ】
 井上咲楽さんの体験は、孤独や不登校といった苦しい状況でも、心を守る方法を見つけられることを示しています。心理学の観点からは、「複数の居場所を持つこと」と、「日記で気持ちを整理すること」が自己肯定感を保つ大切な手がかりです。

 学校や職場で思うようにいかなくても、「今日あった良かったことを3つ書き出す」「新しいコミュニティに足を運ぶ」といった小さな一歩から始められます。続けていくうちに、安心できる居場所や前向きな気持ちが育ち、自分らしく歩む力へとつながっていくでしょう。

(おおしまりえ)

配信元: LASISA

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