
ブロードウェイミュージカル「シカゴ」の来日公演が、8月19日に東京・東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ)にて開幕した。開幕に先立ち、公開リハーサルと囲み取材が行われ、日本公演のオフィシャルアンバサダーを務める米倉涼子も出席した。
■初演から30周年の「シカゴ」が来日公演中
「シカゴ」は、ニューヨーク・ブロードウェイのリバイバル版初演から2026 年で30周年を迎え、世界38か国・500都市以上・13言語で上演されてきたメガヒット・ミュージカル。
実話に基づく2人の悪女によるスキャンダラスなシンデレラ・ストーリーを、名曲「オール・ザット・ジャズ」をはじめとするナンバーと鬼才ボブ・フォッシーの振付を体現したセクシーでスタイリッシュなダンスで描き出す。
物語の舞台は、殺人も強欲も裏切りも渦巻く1920年代のシカゴ。愛人を殺害し投獄された売れない女優のロキシー・ハートは、悪徳敏腕弁護士ビリー・フリンの手引きで、“シカゴで最もキュートな殺人犯”として一躍スターダムを駆け上がっていく。
犯罪すらもショービジネスに変えてしまうこの物語を、オーケストラをステージ中央に据えたおなじみのセットが引き受ける。舞台上で生演奏が奏でられ、審判も見世物も同じ板の上で進行する構造そのものが“ショーをショーで見せる”という本作ならではの面白さを際立たせている。

■虚実の際どい世界を、圧倒的な熱量で立ち上げるキャスト陣
虚実の際どい世界を、圧倒的な熱量で立ち上げるのが、キャスト陣。どんな状況に置かれても強かさを失わず、何度転んでも這い上がっていくロキシーを演じるのは、サラ・ソータート。
小柄ながらもそれを感じさせないパワフルさで舞台を支配し、華奢さすらも自分の欲を貫き通すための武器になっているかのような面白さがある。「Roxie」や「Funny Honey」といったナンバーで見せる、あざとさとかれんさが同居した表現は、見る者を彼女のペースに引き込んでいく。
対するヴェルマ・ケリー役のジャレンガ・スコットは、黒髪のボブが印象的なスレンダーなシルエットが目を引く。先にスターの座を掴んでいた自負を漂わせつつ、後から現れたロキシーに注目をさらわれ、焦りと対抗心をにじませていく。
そのプライドの高さゆえの危うさが、逆に人間味となってヴェルマ自身の魅力につながっていた。冒頭を飾る名曲「オール・ザット・ジャズ」から客席を一気に作品世界へと引き込む求心力は圧巻で、ロキシーとの丁々発止のやり取りが物語に痛快なリズムを生む。
悪徳敏腕弁護士ビリー・フリンを演じるのは、2025年の「レ・ミゼラブル」ワールドツアースペクタキュラーのジャベール役も記憶に新しい、ウエストエンドのトップスター、ブラッドリー・ジェイデン。
女性たちを従えて華やかに登場する「All I Care About」から、金がすべての弁護士を軽やかかつ痛快に演じ、紳士の皮を被った胡散臭さが絶妙だ。観客も陪審も丸め込んでいく彼の手管は、本作屈指の見どころ。三者三様の強者たちがぶつかり合う様は、まさに“オール・ザット・ジャズ”=何でもありのショービジネスそのもの。


■米倉涼子「久しぶりに『シカゴ』の音楽を聴いてホッとしました」
公開リハーサル後、ビリー・フリン役のブラッドリー・ジェイデン、ロキシー・ハート役のサラ・ソータート、ヴェルマ・ケリー役のジャレンガ・スコット、そしてオフィシャルアンバサダーの米倉涼子が登壇し、囲み取材を行った。
今回の「シカゴ」を観た感想を聞かれた米倉は、「久しぶりに『シカゴ』の音楽を聴いてホッとしました。長くこの作品に関わってきて、いろんなタイプの『シカゴ』を見てきましたが、キャストやプロダクションが変わるたびに、エネルギーも感覚も違うショーが出来上がる。今日も見ていて新感覚でした」と語り、「コンプライアンスでいろんな言葉に気をつけて話さなければいけない昨今、言いたいことをズバズバと言うストーリーやセリフがとても面白いなと改めて思いました。踊りも歌も、絶対に楽しんでもらえます」と、太鼓判を押した。
自身が作り上げたロキシー像について、サラは「野心的でありながら、弱さやもろさもある。衝動的だけれど、誠実さやまっすぐな心も持っている役だと思います。素晴らしい演出家、そして皆さんと一緒に作り上げた役どころです」と語り、これまで何度も同役に挑んできた経験から生まれる自分ならではの色を大切にしていることを明かした。
ヴェルマとロキシーの関係性について、ジャレンガは「サラとご一緒できるのはとてもラッキー。2人ともお互いの役どころを愛しています。私たちは実生活とステージ上ではかなり差が大きいタイプ同士ですが、この2人の女性は、欲しいものに向かってまっすぐで、最初は対立していても最後には手を取り合って欲しいものを取りに行く。そこが素敵なんです」と、2人の化学反応を語った。

■ブラッドリー「日本は大好きな国で、また来ることができてうれしい」
初の「シカゴ」出演となるブラッドリーは、「日本は大好きな国で、また来ることができてうれしい。30周年の記念すべき公演に、これまで作品を支えてきた仲間たちと一緒に舞台に立てることを光栄に思います。独立心あふれる強い女性を演じる主役の2人とご一緒することで、また違う自分の面を見せられるというのも、新たなチャレンジです。カンパニーの皆さんに、いい方向に背中を押していただいています」と、充実感にあふれた表情を見せた。
米倉は、ロキシーを演じ続けてきた立場からサラの芝居に触れ、「私も最初にロキシーをやらせていただいてから何度も演じていますが、毎回ロキシーの人間像はどんどん変わっていくんです。2024年にサラのロキシーを見たた時ともまた違う、新たなニュアンスが加わって、新しいロキシー・ハートを見た気がしました。どんなにたくさんのロキシー・ハートがいても、みんな全部違うロキシー・ハートになる。毎日違う感覚なんだなと、今日改めて思いました」と語った。
共通点を問われると「同じ演出家のもとで同じものを作り上げていても、違った感覚が出来上がる。でも、同じものを作っているということが共通点ですね」と、笑いを交えて語った。
最後に米倉は「30周年という素晴らしい節目に、日本で『シカゴ』を観られるのは特別なこと。ぜひこのタイミングで劇場まで足を運んで、直接このエネルギーを感じていただけたら。舞台は直接観ないと感じられないことがたくさんありますし、毎日エネルギーが変わっていきますから、ぜひ楽しみにしていてください」と呼びかけ、囲み取材を締めくくった。
ブロードウェイミュージカル「シカゴ」は、東京・東急シアターオーブにて8月30日(日)まで上演。9月3日(木)からは大阪・オリックス劇場での上演が予定されている。


