●「AI時代」における"作品"との向き合い方
——トレースとは話題が異なりますが、AIによる創作も爆発的に増えています。
昨今は、納品物の中にAI生成物が混ざるケースも起きています。現在の技術で見抜くことがなかなか難しいため、悩ましいです。
たとえば中国では、今年9月から生成AIサービスの提供者には、AI使用のラベリング義務が導入され、EUでも来年からディープフェイク使用の明示が義務化されます。
以上を総合すると、納品物に関するリスクの低減においては、「法」「技術」「規範(法以外の慣習などのルール)」の3つの観点から、納品物のリスク低減を図ることが重要だと思います。
法に関しては、たとえば、著作権法は当然として前述のようなAI関連の立法、技術に関しては画像検索などの類似度チェック、そしてリスク予防のための契約書や炎上しやすい傾向などが規範になります。
唯一の具体的な解決策を見つけることは難しいですが、トレースによる炎上・紛争の予防を検討するうえでも、この3つの観点を念頭においておくとよいように思います。
【取材協力弁護士】
出井 甫(いでい・はじめ)弁護士
2013年早稲田大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第一東京弁護士会・68期)。大手法律事務所を経て、2018年2月骨董通り法律事務所。2023年まで内閣府知的財産戦略推進事務局に出向。主著として、「AI生成物の著作物性に関する議論の現状と今後の法実務」ジュリスト2024年7月号(No.1599)、「AI生成機能の動向と著作権法上の課題への対策」コピライト 2023年1月号など。
事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com

