MSは「再発」と「寛解」を繰り返す病気であるため、日常生活への影響は予測しにくいことがあります。特につらいとされる「MS疲労」や認知機能の変化は、外見からはわかりにくく、周囲に誤解されやすい側面もあります。症状と上手につき合うための工夫や、精神的な健康を守るためのサポート体制について紹介します。

監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医
多発性硬化症 (MS) が女性の日常生活に与える影響
MSは、症状の表れ方に波があることが特徴的な指定難病です。症状が強く出る「再発」と、症状が落ち着く「寛解(かんかい)」を繰り返すことが多く、その予測しづらいサイクルが日常生活にさまざまな影響を与えます。このセクションでは、仕事や家庭など多忙な日々を送る女性患者さんの生活における具体的な課題と対処法を取り上げます。
疲労・認知機能への影響と日常生活の工夫
MSの症状のなかで、患者さんが特につらいと感じることが多いのが「疲労」です。この疲労は、しっかり睡眠をとっても回復しにくい、通常の疲れとは異なる感覚であることが特徴で、「MS疲労」と呼ばれます。身体を動かしていなくても耐えがたい疲労感に襲われ、家事や仕事を途中で中断せざるを得なくなる場合があります。
また、記憶力や集中力の低下、物事を計画・判断するスピードが落ちるといった「コグニティブ症状(認知機能障害)」も報告されています。外見からは症状がわかりにくいため、周囲から「怠けている」と誤解されやすく、精神的な負担につながりやすい点も課題です。さらに、入浴や運動などで体温が上がると一時的に症状が強まる「ウートホフ現象」も知られており、夏場の外出や水回りでの家事には工夫が必要です。
これらの影響を和らげるためには、体力を賢く使う「ペーシング(エネルギー管理)」が有効です。調子が良い時でも無理をせず、計画的に休憩を挟む生活習慣を意識することが大切です。主治医や作業療法士などリハビリの専門家と相談しながら、自身の生活スタイルに合った工夫を取り入れましょう。
精神的健康と社会的なサポートの重要性
MSは身体的な症状だけでなく、精神的な健康にも深く関わっています。うつ症状や不安感はMS患者さんに多く見られる合併症のひとつです。これは「再発への不安」といった心理的ストレスだけでなく、脳の炎症や病変そのものが感情のコントロールに影響を与える神経症状の一種としても知られています。
特に女性の場合、子育てや介護、仕事など家庭や社会で複数の役割を担っていることが多く、自身の不調を後回しにして無理を重ねてしまう傾向があります。孤独感を抱え込まず、医療機関での心理カウンセリングや、患者会・支援グループなどを活用して不安を共有することが心のケアにつながります。
社会的な支援制度としては、難病法に基づく医療費助成制度があり、MSは「多発性硬化症/視神経脊髄炎」として指定難病(指定難病13)に指定されています。症状の重症度や医療費の負担額(軽症高額該当)などの一定の基準を満たす場合、医療費の自己負担が軽減されます。手続きや要件については、お近くの保健所や病院の医療社会福祉士(ソーシャルワーカー)へ早めに相談することをおすすめします。
まとめ
多発性硬化症(MS)は、女性に多く見られる中枢神経の自己免疫疾患であり、初期症状が多様なために診断に時間がかかることもあります。視神経炎や感覚障害、運動障害などの初期サインを見逃さず、早めに神経内科を受診することが大切です。治療薬や定期検査などの費用は指定難病制度や高額療養費制度によって軽減できる部分もあります。気になる症状がある場合や治療の継続に不安を感じる場合は、まずは神経内科に相談することをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「013 多発性硬化症/視神経脊髄炎」
難病情報センター「多発性硬化症(指定難病13)」
国立精神・神経医療研究センター「多発性硬化症とは」
日本神経学会「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」
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