●「証拠にできる」ことと「裁判に勝てる」ことは別の話
ただし、このLINEのやり取りが証拠として採用されたとして、それだけで慰謝料請求が認められるか、という点にも注意する必要があります。
慰謝料請求が認められるためには、「不貞行為(基本的には肉体関係)」の存在が不可欠です。LINEのやり取りだけで肉体関係の存在や頻度が詳細にわかるわけではないのが通常であるため、これだけで多額の慰謝料が認められるかといえば難しい部分もあります。
しかし、本件では、夫が性病になったという「事実」があり、その感染経路についてLINEのやり取りで示唆される「事実」(例えば、性病に関する言及、性交渉の示唆、ホテルの利用など)が残っていれば、夫と不貞相手との性交渉による感染を強く推認させる有力な証拠となりえます。
不貞相手が肉体関係を否定している場合でも、他の状況証拠(ホテルの予約記録、二人の写真など)とLINEのやり取りを組み合わせることで、慰謝料請求が認められる可能性は高まります。
相談者としては、LINEのやり取りに加え、夫のクレジットカードの利用明細、ホテルの予約履歴、不貞相手のSNS投稿など、不貞行為の事実を裏付ける他の証拠がないか調べてみるのが良さそうです。

