家族性高コレステロール血症はどのように診断されるのか、その基準と検査のポイントを解説します。血液検査の数値だけでなく、アキレス腱の肥厚や腱黄色腫といった身体所見も診断の手がかりになります。また、家族全体に向けた「カスケードスクリーニング」や小児期からの検査の重要性についても確認していきましょう。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
家族性高コレステロール血症の診断と検査のポイント
このセクションでは、家族性高コレステロール血症の診断基準と、受診の際に押さえておきたい検査のポイントについて説明します。「どうすれば診断されるのか」「何を調べてもらえばよいのか」を知ることで、受診をよりスムーズに進められます。
診断基準の主な指標
家族性高コレステロール血症の診断は、血液検査の数値だけでなく、複数の所見を組み合わせて総合的に判断されます。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、成人(15歳以上)に対する診断基準として以下の3項目が使われています。
未治療時のLDLコレステロール値が180mg/dL以上
腱黄色腫(アキレス腱や手背の腱に脂質が沈着したもの)または皮膚結節性黄色腫の存在
家族(両親・兄弟姉妹・子ども)に家族性高コレステロール血症の方、または早発性(男性55歳未満、女性65歳未満)の冠動脈疾患の方がいる
これら3項目のうち2項目以上を満たす場合、家族性高コレステロール血症と診断されます(※家族歴は祖父母や叔父・叔母など2親等以内まで含みます。なお、診断をさらに確実にするため、必要に応じて遺伝子検査が行われる場合もあります)。なお、小児の場合は別の基準が設けられており、早期発見のために10歳前後での検査も推奨されています。
身体所見として現れるサイン
血液検査の数値とともに、身体に現れるサインも診断の重要な手がかりになります。代表的なものがアキレス腱の肥厚です。かかとからふくらはぎにつながるアキレス腱の部分が、LDLコレステロールの沈着によって通常よりも厚くなる所見で、超音波検査などで確認することができます。アキレス腱肥厚の程度はX線で男性8.0mm・女性7.5mm以上、超音波で男性6.0mm・女性5.5mm以上で陽性と判断します。
このほかにも、手の甲や肘、膝などに黄色いしこりのような腱黄色腫(けんおうしょくしゅ)が生じることがあります。また、目の角膜の周囲が白く輪状に見える「角膜輪(かくまくりん)」と呼ばれる所見も、若い年齢で認められる場合に家族性高コレステロール血症を疑うきっかけになることがあります。
これらの所見は必ずしもすべての方に現れるわけではありませんが、LDLコレステロール値が高い状態が続いている場合には、医師に確認してもらうことが望まれます。身体に変化がない場合でも、血液検査の数値と家族歴を組み合わせて判断するため、気になる点があれば内科や脂質代謝内科に相談してみてください。
小児期の検査と家族全体へのアプローチ
家族性高コレステロール血症の方が診断された場合、その一親等(親・兄弟姉妹・子ども)に対しても検査を行うことが強く推奨されます。これは「カスケードスクリーニング」と呼ばれる取り組みで、見落とされがちな家族の患者さんを早期に見つけ出すことを目的としています。
小児においても、早期から高いLDLコレステロール値が続くと動脈硬化が進みやすくなることが知られています。日本動脈硬化学会では、家族性高コレステロール血症が疑われる場合、小学校就学前後(5〜10歳)を目安にコレステロール検査を受けることが望ましいとされています。子どもの段階での発見と管理は、長期的な心血管リスクを低下させるうえで大切な取り組みです。
まとめ
家族性高コレステロール血症は、遺伝的な原因によってLDLコレステロールが高い状態が続く疾患です。自覚症状が乏しいため気づかれにくいですが、放置すると動脈硬化が進行し、心血管疾患のリスクが高まる可能性があります。食事や運動による生活習慣の改善とともに、スタチン系薬剤をはじめとした薬物療法が治療の柱となります。女性の場合はホルモンの変化が大きく影響するため、ライフステージに応じた管理が重要です。気になる症状や家族歴がある方は、内科や脂質代謝内科への相談を検討してみてください。
参考文献
日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」
国立循環器病研究センター「家族性高コレステロール血症について」
厚生労働省「79 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)」
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
国立循環器病研究センター「脂質異常症」
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