昔に比べて平均寿命・健康寿命ともに延びている現代ですが、それでも予期せず病気にはかかってしまうものです。
しかし、仮に病気にかかってしまっても、早期発見による迅速かつ適切な治療によって悪化を防げる場合があります。
そういった病気の中から今回焦点をあてて解説するのは急性腎不全です。
具体的な症状やなりやすい人、慢性化の可能性など説明します。体調や体質的に不安のある方は参考にしてください。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
※この記事はメディカルドックにて『「急性腎不全(急性腎障害)」とは?症状・原因についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
急性腎不全(急性腎障害)の特徴

急性腎不全はどのような病気ですか?
急性腎不全とは急性腎障害ともよばれ、腎機能が急激に低下する病気です。
正常な腎臓は主に、余計な水分や毒素などの老廃物を尿として排泄します。この働きが、血圧の上昇を抑えたり、体に溜まった水分によるむくみを防いだりして病気から体を守っているのです。
しかし、急性腎不全によってこれらの腎機能が低下し、体に悪影響が現れるようになります。
具体的な症状について教えてください。
症状には個人差がありますが、最も多い症状は尿量が少なくなる乏尿と全く出なくなってしまう無尿です。乏尿あるいは無尿になると水分や老廃物がたまり、高血圧やむくみを引き起こし、さらに症状が進むと尿毒症という状態になります。尿毒症の症状は主に以下の5つです。
食欲低下
吐き気
倦怠感
意識障害
貧血
この他にも呼吸がしづらくなったり、味覚に異常をきたしたりと体のあらゆる部分に症状が出ます。
自覚症状としてわかりやすいのが乏尿や無尿ですが、まれに尿量が正常であっても急性腎不全になっている場合もあるので注意が必要です。少しでも体に異常を感じたら、医療機関での診察を受けましょう。
どのくらいの期間で症状が悪化するのでしょうか?
症状と同様にこちらも個人差があるようですが、急性腎不全の場合は治療によって悪化する前に回復する可能性があります。
しかしあくまで可能性なので、回復しなかった急性腎不全は悪化し、末期腎不全にまで至る場合もあるようです。
この末期腎不全になってしまうと心臓にまで悪影響を及ぼすようになり、最悪の場合、命の危険もあるとされています。
慢性化する危険はありますか?
前述したように、急性腎不全は治療によって回復が期待できる病気ですが、過半数が完全な回復には至らずに慢性化し、慢性腎臓病になってしまいます。
慢性腎臓病は、腎不全になる前段階である腎臓病の症状が慢性化した病気です。慢性腎臓病は悪化すると末期腎不全に至ることがあります。末期腎不全になってしまうと命にかかわってくるので透析治療や腎臓移植が必要です。
ちなみに急性腎不全の他に慢性腎不全がありますが、慢性腎不全は慢性的な原因による腎不全なので、慢性腎臓病とは別の病気であるとされています。
どのような人がなりやすいでしょうか?
急性腎不全は体質的に腎機能が弱い人がなりやすいとされています。
自身の腎機能はクレアチニンとeGFRの値によって正常であるかを判断することが可能です。クレアチニンは健康診断などで行われる血液検査で数値を知ることができ、eGFRはクレアチニンの値から計算によって数値を出すことができます。
不安な方は健康診断で出た数値をよく確認しておきましょう。
編集部まとめ

今回は急性腎不全について解説しました。急性腎不全は急速な腎機能の低下が特徴的な病気です。
尿量が減ることで老廃物などがたまり、むくみや高血圧といった症状が現れます。重症化すると意識障害や命にかかわることもあるので適切な早期の治療が大切です。
早期治療のためには早期発見が重要であり、日常的な自己の体調管理を行うことが早期発見につながります。
ここでの解説を機に、日常的な体調チェックや定期的な健康診断を受ける方が増えたら幸いです。
参考文献
症状について|全腎協
末期腎不全と言われた|日本泌尿器科学会
急性腎障害|順天堂大学医学部附属順天堂医院腎・高血圧内科
急性腎不全|済生会
急性腎障害(AKI)|国立循環器病研究センター

