薬物療法と並行して取り組みたい生活習慣の改善策について解説します。飽和脂肪酸や食物繊維を意識した食事の工夫、有酸素運動の取り入れ方、禁煙の効果など、日常から始められる具体的なアプローチをまとめています。体重管理やアルコールとの向き合い方についても、無理なく実践できる視点でご紹介します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
家族性高コレステロール血症のLDLコレステロールを下げる方法:生活習慣の改善
このセクションでは、薬物療法と並行して取り組むべき生活習慣の改善策について解説します。遺伝的な要因が大きいとはいえ、日常生活の積み重ねが数値の管理に影響を与えることが知られています。食事・運動・禁煙の3つの柱を中心に、実践しやすい方法を紹介します。
食事療法の基本的な考え方
食事療法は、LDLコレステロール値に直接影響を与えるものとして重要です。特に意識したいのが飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取量です。牛肉や豚肉の脂身、バター、生クリームなどに含まれる飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを上昇させる働きがあるため、摂りすぎには注意が必要です。また、一部のマーガリンや加工食品に含まれるトランス脂肪酸も、LDLコレステロールを上昇させる可能性があるとされています。
一方で、積極的に取り入れたいのが食物繊維です。野菜、豆類、海藻、果物などに豊富に含まれる水溶性食物繊維は、腸内でコレステロールの吸収を抑えるとされており、日常的な摂取が望まれます。また、青魚(サバ・イワシ・サンマなど)に多く含まれるEPAやDHAといったオメガ3脂肪酸は、中性脂肪を下げる働きがあり、心血管の健康を支える可能性があります。
なお、食事療法だけで家族性高コレステロール血症のLDLコレステロール値を正常範囲に戻すことは難しい場合がほとんどですが、薬物療法との相乗効果を高めるためにも、食生活の見直しは継続することが大切です。
運動と禁煙がもたらす効果
適度な有酸素運動は、LDLコレステロール値を直接的に大幅に下げる効果は限定的とされていますが、HDLコレステロール(いわゆる「善玉コレステロール」)を増やしたり、中性脂肪を減らしたりする効果が期待できます。また、肥満の改善や血圧の安定、インスリン感受性の向上など、心血管リスク全体を低下させるうえでも運動は有益です。
ウォーキングや水泳、自転車こぎといった有酸素運動を1日30分程度、週に5日以上行うことが一般的に推奨されています。激しい運動を突然始める必要はなく、日常の中でエレベーターより階段を使う、一駅分歩くといった習慣から始めることでも効果が期待できます。
禁煙も非常に重要な取り組みです。喫煙はHDLコレステロールを低下させ、動脈硬化を促進する働きがあるとされています。家族性高コレステロール血症の方はもとより動脈硬化のリスクが高いため、喫煙は避けることが強く望まれます。禁煙が難しい場合は、内科や禁煙外来に相談することも選択肢のひとつです。
体重管理とアルコールへの注意
肥満はLDLコレステロールや中性脂肪の上昇と関連することが知られており、適切な体重を維持することが心血管リスクの管理においても重要です。特にBMI(体格指数)が25以上の方では、体重を5〜10%程度減らすだけでも脂質の数値が改善される場合があります。
アルコールについては、過剰摂取は中性脂肪の上昇につながることが知られており、飲酒量を適切な範囲に抑えることが望まれます。「適量」の目安は個人差がありますが、日本酒換算で1日1合程度(ビールであれば中瓶1本程度)が一般的なラインとして示されることが多いです。ただし、薬物療法中の方は服薬している薬との相互作用も考慮する必要があるため、担当医に確認することが大切です。
まとめ
家族性高コレステロール血症は、遺伝的な原因によってLDLコレステロールが高い状態が続く疾患です。自覚症状が乏しいため気づかれにくいですが、放置すると動脈硬化が進行し、心血管疾患のリスクが高まる可能性があります。食事や運動による生活習慣の改善とともに、スタチン系薬剤をはじめとした薬物療法が治療の柱となります。女性の場合はホルモンの変化が大きく影響するため、ライフステージに応じた管理が重要です。気になる症状や家族歴がある方は、内科や脂質代謝内科への相談を検討してみてください。
参考文献
日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」
国立循環器病研究センター「家族性高コレステロール血症について」
厚生労働省「79 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)」
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
国立循環器病研究センター「脂質異常症」
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