タイトルの仕掛け
二枚を一層印象深くしているのが、タイトルです。《My First Sermon》《My Second Sermon》──説教する牧師の立場ではなく、聞かされる子どもの体験を主語にしています。
「私の初めての説教」「私の二度目の説教」というタイトルに触れた瞬間、観る者は自然と少女の視点に立ち、彼女の緊張や退屈を追体験することになります。荘厳な宗教画に見えて、同時に親しみやすい物語性を帯びているのは、このタイトルの力によるところが大きいのです。
展覧会での反響 ― 大主教の賛辞
1863年、ロイヤル・アカデミー展で《初めての説教》が公開されると大きな話題を呼びました。カンタベリー大主教ジョン・バード・サンプソンは展覧会の晩餐会でこの作品に触れ、
「この小さな子どもの顔には、説教を聞く者の敬虔さが余すことなく表れている」
と称賛しました。宗教的権威が公の場で作品を評価したことにより、絵の人気はさらに高まりました。翌年の《二度目の説教》も「説教の長さへの風刺」として話題にされ、観客の共感を得ました。
