穏やかな家庭生活を送る32歳のさゆりは、出産をへて以前働いていた職場に復帰。しかし、その職場には勤務歴が長いお局従業員がいました。パート仲間の恵美とともに、お局の嫌味な言動に困り果てているさゆりでしたが…。
順調な社会復帰かと思いきや…
「はぁ、今日も疲れた…」
保育園に迎えに行くと、2歳になったばかりの長女、みゆが「ママ!」と飛びついてくる。この瞬間のために、私は毎日職場でのアレコレをリセットしている気がする。
私はさゆり、32歳。夫の健と愛娘のみゆとの3人暮らしだ。健も私と同じ32歳で、穏やかで優しい性格。仕事で疲れて帰ってきても、みゆを風呂に入れてくれたり、私の話に耳を傾けてくれたりする、最高のパートナーだ。
現在、私は近所の飲食店でパートとして働いている。出産で一度退職したが、みゆが保育園に入れたのを機に再入社した。勤続年数自体は合計で10年ほどになる。慣れた仕事と、理解のある同僚たちに囲まれて、順調にブランクを埋めていた……、いや、埋めているつもりだった。
いわゆる「おつぼね」パートメンバー
私たちの職場には、私より長い年数を働いている50代のパート従業員がいる。彼女の名前は鈴木さん。通称は「おつぼね」。なぜなら、もう誰もが認める、職場のおつぼねだから。勤務歴の長さと、店長や地域社員も頭が上がらないような威圧感で、彼女はパートメンバーの中で実質的に一番「職位」が高い。
「さゆりさーん、お疲れさま!おつぼね、今日は機嫌どうだった?」
休憩室で、私より少し年下のパート仲間の恵美が、小声で私に話しかけてきた。
「んー、今日はちょっとピリピリ。『新人が使えない』ってずっと独り言言ってたよ」
「あーあ……またか。正直、あの人がいると、休憩室の空気まで重いね。私たちは慣れてるからいいけど、新人さんはかわいそう」
恵美の言葉に、私は深く頷いた。そう、まさにその通りなのだ。おつぼねは、誰に対しても態度が横柄で、まるで自分がこの店のオーナーであるかのように振る舞う。
注意すべき点を指摘するのはいいが、言い方が尋常ではない。個人攻撃、人格否定、そして感情的な叱責。それが彼女の「後輩指導」だった。

