沈黙の臓器とも呼ばれる肝臓は、がんや障害があっても自覚症状がほとんどありません。しかし、がんが大きくなると、しこりが生じることもあります。
肝臓がんのしこりはどの位置に生じるのでしょうか。この記事では、肝臓がんの症状について解説していきます。
※この記事はメディカルドックにて『「肝臓がん」を発症すると「しこり」はどの位置にできる?症状や治療方法も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
肝臓がんとは?
肝臓がんとは、肝臓にできるがんの総称です。肝がんと呼ばれることもあります。肝臓がんの一部は胆管ががん化した肝内胆管がんですが、日本ではほとんどが肝細胞ががん化した肝細胞がんです。沈黙の臓器と呼ばれる肝臓のがんは、初期症状に気付かないことも多く、定期検診や人間ドックで異常が見つかるケースも少なくありません。
肝臓がんは肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が原因となることも多く、以下の病気が肝臓がん発生のきっかけになる場合があります。
B型・C型肝炎ウイルスへの持続感染
自己免疫性肝炎
アルコール性肝障害
非アルコール性脂肪肝炎
上記以外にも喫煙や加齢も肝臓がんのリスク因子です。また、肝臓以外の臓器にできたがんが、肝臓に転移する転移性肝がんもあります。肝臓がんは50代から増え始め、女性よりも男性に多く見られるのが特徴です。
肝臓がんの症状
肝臓がんは初期症状がほとんどないといわれているがんです。ただし、ほかの部位がすでにがんを患っていたり、肝炎や肝硬変など肝臓がんの原因となる疾患が発生したりしているケースも少なくありません。
ここからは、それらの病気による症状が現れている場合や、肝臓がんが進行した場合に現れる症状を解説します。
全身倦怠感が続く
がん患者さんは日常生活に支障をきたすほどの持続的な全身倦怠感を覚える方が少なくありません。倦怠感が生じる原因のひとつが悪液質です。がん細胞はサイトカインと呼ばれる物質を分泌します。その物質やがんに対する身体の反応で代謝に異常が生じ、その結果起こる合併症が悪質液です。
悪液質の症状のひとつとして筋肉量が減少するため、全身に倦怠感を感じるようになります。また、食欲低下により、全身倦怠感がひどく感じるケースもあるでしょう。
貧血が現れる
肝臓がんが進行すると、お腹のなかで破裂し、出血を起こすことがあります。それにより、貧血の症状を訴える肝臓がん患者さんも少なくありません。
貧血の症状には、めまい・頭痛・立ちくらみ・息切れ・動悸などが挙げられます。また、重度の貧血になると、吐き気や食欲不振になるケースが見られるのが特徴です。
急な腹痛が起こる
肝臓がんが進行すると、急な腹痛が起こるケースがあります。お腹のなかで肝臓がんが破裂した場合は、突如激しい痛みが生じるのが特徴です。
それ以外にも、周辺組織や神経が肝臓がんにより圧迫される痛みや、肝臓がんの周囲に炎症が生じることによる痛みの可能性もあります。発熱を伴う場合もあるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
自覚症状がわかりにくい
肝臓がんの初期段階では、自覚症状はほぼありません。肝臓には自己修復機能や自己再生機能が備わっているため、自覚する前に痛みや炎症を抑えてしまうからです。ただし、自己修復機能には限界があるため、肝臓がんが進行すると痛みや炎症を抑えられなくなります。
肝炎や肝硬変と同時に発見されやすい
肝臓がんは慢性肝炎や肝硬変など慢性的な肝疾患をお持ちの方に発生するケースがほとんどです。そのため、肝炎や肝硬変と同時に発見されることが多々あります。
肝炎や肝硬変は血液検査で発見され、その後状態に応じて腹部超音波検査や肝生検が行われるのが一般的です。身体の外から肝臓に振動を与え、その伝わり方で肝臓の硬さを図るフィブロスキャンが用いられることもあります。

