専業主婦からパートに出たりかこは、優しい社員・宮田に親近感を抱きます。しかし、彼のデリカシーのない個人的な質問は、やがて違和感しかない領域に踏み込んできて…。
よい職場に出会えたと思っていた
私はりかこ。ごく普通の主婦です。最近、専業主婦からパートを初めて、いわゆる「社会復帰」をしました。久しぶりの労働って、最初は疲れるけど、やっぱり誰かの役に立ってる実感とか、休憩中に飲むコーヒーのおいしさとか、全部が新鮮で。
「ゆきの、今日はママ頑張ってきたよ!」
そう言って娘を抱きしめる瞬間が、本当に幸せ。私がパートを始めたのは、家の近所にある人気のカフェです。店長も優しくて、一緒に入るパート仲間もみんな穏やかで、最高の職場だと思っていました。
このまま、ゆきのが大きくなるまでここで働けたらいいな、って心から願っていたんです。
頼れる社員さんのはずだった
そこで知り合ったのが、宮田さん。32歳で、私たちより少しだけ年上。パートではなく社員さんで、仕事もテキパキこなすムードメーカー的な存在でした。
「りかこちゃん、このドリップバッグの詰め方はね、こうやって口をそろえる方がきれいだよ。細かいけど、お客さんは見てるから」
「あ、ありがとうございます!宮田さんって色々知っててすごいですね」
「いやいや、俺もさ、りかこちゃんみたいに久しぶりに社会復帰した女性の苦労はわかるつもりだよ。うちにも上が6歳、下が2歳の子がいるからさ。奥さんもりかこちゃんと同じようにパートしてくれてるし」
そう、宮田先輩も妻子持ち。6歳と2歳の子がいるって聞いていたから、最初は本当に親近感が湧いたし「すごく理解のある優しい社員さん」って思ってたんです。私がミスしても笑ってフォローしてくれたりして。当初の私にとって、宮田さんは「頼れる社員さん」でしかありませんでした。

