看取り覚悟で元ボス猫も自宅に迎え入れて…
怜音ちゃんを優先的に保護したのは、虎王くんよりも生命力が弱いと判断したから。飼い主さんは同居中の両親との関係性を心配していましたが、怜音ちゃんは威嚇をせず、小さな声でご挨拶。あっという間に家での暮らしに慣れてくれました。
「お迎えから数日後、初めて抱っこをしたら、喉を鳴らして私の胸に顔を埋めて眠ってくれました」残るは、虎王くんの保護。飼い主さんは怜音ちゃんのお世話で手一杯になったため、同僚と協力しながら虎王くんをサポートし、ひとまず大寒波を乗り越えました。
職場の人たちの優しい見守りもあり、虎王くんはその後も“会社の猫”として、しばらく暮らしていたそう。
しかし、ある日、新参者の猫に襲われて縄張りを追われ、姿を消してしまいます。目撃情報が寄せられるたび探しに行くも見つからず、再会できたのは半年後でした。「虎王を倒した猫がまだうろついているのに、早朝から物陰に潜んで私の出勤を待っていました」
虎王くんはやせ細り、顔には大怪我が……。飼い主さんは悩んだ末、虎王くんを愛猫として迎え入れるようと決意しました。
「ここで虎王を見捨てて一生後悔して生きるくらいなら、私が頑張れば済むことだと思ったんです。ボロボロの状態だったので、看取り保護になる覚悟で連れ帰りました。子どもや仲間を守り続けたのだから最期くらい、安心して暖かな場所で逝かせてあげたくて」奇跡のV字復活を果たした父猫…お迎え後に見た“猫の親子愛”とは?
お迎え後、虎王くんは極度の緊張状態に。朝になったら死んでいるのでは……。そんな不安を抱きつつ、飼い主さんは獣医師のアドバイスを受けながら自宅療養や治療を進めていきました。すると、虎王くんの体調は快方に向かい、自分なりの生活パターンを掴んで、穏やかな家猫ライフを送るように。
「シャンプーや駆虫、ワクチン接種を済ませた後に抱っこしようと手を広げたら、自ら腕の中に入ってきてくれて。幸せそうに私の顔にスリスリして、何度もキスをしてくれました」愛らしいその姿を見て、飼い主さんは今まで虎王くんの耳に届いていた「悪い猫」という言葉の冷たさに、改めて胸が痛んだそう。
また、虎王くんと怜音ちゃんの深い親子愛を見て、胸がいっぱいになりました。「お迎え当初、虎王を別室で隔離していたら、怜音がソワソワし始めて。1年8ヶ月も会えていなかったので、さすがに覚えていないだろうと思っていましたが、怜音はわずかな隙をついて部屋から飛び出し、虎王のケージへ。2匹はケージ越しに鼻をくっつけ、目を細めていました」
怜音ちゃんは不安鳴きする虎王くんのそばで小さく鳴き、喉を鳴らしながらケージ越しに寄り添いもしたそう。愛が溢れるその光景を、飼い主さんは美しいと感じました。
「怜音も虎王も堂々たる体と凛々しい顔立ちなので、強そうとか怖いとか言われますが、実際はナイーブで甘えん坊。悲しくなればヒンヒン鳴いて私のお腹に顔を埋め、抱きしめると赤ちゃんのように腕の中で丸くなって眠ります」
