猫の生態が広く理解され、誤解や迫害が起きない社会になってほしい
一生分の警戒心を使い果たした2匹は現在、居眠り中に猫ベッドから滑り落ちたり、ご飯の時間に興奮しすぎてお皿の前で滑ったりするなど、ドジな一面も見せられるように。2匹の日常を微笑ましく見守る中で、飼い主さんは野良猫への適切な接し方が多くの人に知られてほしいと、より強く思うようになりました。
「地域問わず、猫の生態や行動パターンを理解する人が増えれば、猫も人も少しずつ暮らしやすくなるはず。周囲の協力を得られると、自分ひとりではできないことも解決でき、保護やTNRもしやすくなります。猫が誤解をされ、迫害されない社会になってほしい」
そう話す飼い主さんは自身の現状を客観視し、愛猫を最優先にしながら他の猫との向き合い方を考えることの大切さも訴えます。
「実は私が初めて共に暮らした猫は、虐待で牙を全て切断されて捨てられた老猫でした。その子は猫エイズで腎臓の状態も悪かったので3年で亡くなりましたが、あの時誓った『自分が迎え入れた猫は、何があっても最後まで共に生きる』の覚悟は、今でも心に強く刻まれています」
猫を見かければ触りたくなるし、痩せた子にはご飯をあげたくなるのが猫好きの性。しかし、その愛は、多頭飼育崩壊を引き起こすきっかけになることもあるからこそ、自身の年齢や収入、体力などを考慮して守れる命の範囲を考えることは大切。慎重な判断は、不幸な猫を増やさないことにも繋がります。
「悪い猫」と忌み嫌われたまま、命を終えずに済んだ虎王くんと怜音ちゃん。素の自分に戻れる家族と出会えたことに幸せを感じている2匹は、これからも「かわいい」を注がれる日々を送っていきます。<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

