「こんな仕事を毎日何時間も」パートに尊敬の念を抱く
それでなくてもピリピリした雰囲気の男性社員がますます怖くなった。時計をそっと見ると、ようやく2時間たったところだ。「まだあと3時間もある……絶望しました」。
室内は調理をするため、エアコンはキンキンに効いているとはいえ、水分は摂っておかないと危ない。エプロンのポケットに入れた水をこまめに飲んではいたが、業務用オーブンの前に立っていると頭痛がしてきた。
「周りのスタッフは誰も水など飲んでいる様子はありません。トイレにも行かない。何なんだ、この人たち? こんな仕事を毎日何時間もやっているんだ、と尊敬の念さえ湧いてきました」
男性社員は若いが、あとの2人は森さんよりは少なくとも10歳は年下だろう。年齢の違いをひしひしと感じた。3時間を過ぎたころには、腰の痛みがひどくなってきた。
「立ちっぱなしの上に、単調な作業で同じ姿勢を続けていたのが腰痛の原因だと思います。ものを取るときに、こっそりしゃがんで腰を伸ばしてみたり、足を踏ん張って立ってみたりするのが精いっぱい。トイレで座るとちょっと楽なんでしょうが、トイレに行かせてくださいとも言い出しにくくて。水分があまり摂れてないせいか、尿意もないのですが」
ただの使えないオバさん。ポンコツぶりが身に沁みた
後半2時間は修行だと思ってひたすら耐えた。あと1時間半、あと1時間……業務終了を告げられた時には疲労困憊。腰は限界に達していた。這うようにして退室した。
退勤手続きをしている時、もう一人の女性も同じスキマバイトだったことがわかったが、さらに森さんは凹んでしまった。
「50代くらいの彼女は全然疲れていないように見えて、これからスーパーで買い物して帰ると言っていました。私、これまでどんな仕事も要領よくこなせる自負があったのですが、スーパーではただの使えないオバさんだったようで、すごい敗北感でした」

