転勤族の妻として引っ越してきた真理は2児の母。同じマンションに住む香と仲良くなります。明るく元気なママ友ですが、その振舞いに少しずつ違和感が出てきて…。
新しい土地でのスタート
「ママ、公園に行こう!」
「はいはい、ちょっと待ってね」
5歳になる息子のナオトが、玄関先ではしゃいでいる。私は宮本真理、34歳。1歳の娘を抱っこひもで背負うと、ナオトと一緒に手を繋いだ。
半年前に引っ越したこのマンションは、目の前に小さな公園がある。転勤族の妻としてさまざまな土地を移動した育児生活だったが、ようやく終わりが見えていた。
夫の誠一いわく「ここが最後の場所になると思う」とのこと。今後ここが、ナオトたちの地元になるだろう。地方都市でありながらも自然豊かで、交通利便がいいこの街を、私も気に入っていた。
同じマンションの明るいママ友と仲良しに。でも…
公園に着くと、すでに1組の親子の姿があった。
「真理さん、こんにちは!」
「香さん。こんにちは」
彼女はママ友の香さん。私より1つ年上の35歳。同じマンションに住んでいる。大人しいとよく評される性格の私にとって、彼女の明るさは救いで、引っ越してすぐに仲の良いママ友になった。
「ナオトも遊ぼうぜ!」
「うん!」
香さんの上の子、7歳の勝也くんが明るい声でナオトを誘う。彼は母親そっくりで、活発な性格だ。下の子裕也くんは、ナオトと同じ5歳で大人しい。早生まれのせいかナオトよりも小柄で、並ぶと全員で三兄弟のように見えた。
「ママたちは向こうにいるね。真理さん、ベンチで座ろう」
声をかけられ、香さんと一緒に少し離れたベンチに座る。しかし、しばらくしてすぐに彼女は砂場に駆けつけた。
「ナオトくん! 今、裕也を突き飛ばしたでしょ?」
遊びに夢中になり、裕也くんに肩を当ててしまったナオトを、香さんは引き離した。私は、またか…と、頭を悩ます。

