腸炎は、誰もが一度は経験する病気ではないでしょうか?ある日突然お腹が痛くなって、下痢が止まらずトイレとの往復、その他ほとんど何も手つかずで疲れ果ててしまいます。
海外旅行で体に合わないものを食べてお腹を壊したという話をときどき聞きますが、そうなるとまさに踏んだり蹴ったりです。
もちろん腸炎は食あたりだけでなく、風邪をこじらせてもただ体調が悪いときにも発症することがあります。
ここでは身近で経験することが多い腸炎について、原因、そして診断法についてまとめました。
※この記事はメディカルドックにて『「腸炎」とは?症状・原因・食事についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
腸炎の原因と診断方法

腸炎の原因はなんですか?
感染性の急性腸炎は、ウィルスや細菌、ときには寄生虫の感染で発症します。しかし大半はウィルス性の食中毒です。
原因となるウィルスとしては、ノロウィルス・アデノウィルス・ロタウイルスなどがよく知られています。原因が細菌性の場合では、カンピロバクターが最も多く・サルモネラ菌・病原性大腸菌・腸炎ビブリオ・黄色ブドウ球菌が原因となります。夏季に好発します。
非感染性の急性腸炎の場合は、暴飲暴食による消化不良・アレルギー・毒キノコなどによる中毒が原因になります。
一方慢性腸炎の原因は、急性腸炎と同じような細菌やウイルスへの感染の他に、暴飲暴食などの生活習慣の乱れが考えられます。
また自己免疫に問題があったり、ストレスによって引き起こされたり、はっきりとした原因が不明の場合もあります。
ノロウイルスなどは冬に感染者が多いイメージですが…。
確かにノロウイルスによる食中毒が流行するのは、主に冬の時期です。しかし急性腸炎の原因になるのはノロウイルスだけではありません。
ロタウイルスやアデノウイルスなどさまざまなウイルスが腸炎の原因になるため、そのすべてが冬に流行するとは限りません。
たとえばロタウイルスは3月から5月ごろに流行することが多いです。一方で夏は、生または加熱不十分な肉や内臓などから細菌を原因とする感染性の腸炎がよく発生します。
細菌性の腸炎は火を通していない鶏卵やサラダなどの食物から感染することもあるほか、衛生状態の悪い水をうっかり飲んでしまっても感染します。
O-157などの腸管出血性大腸菌が原因の腸炎がひんぱんに起こるのも、初夏から初秋の時期です。
腸炎の診断はどのような流れで行いますか?
腸炎の診断は一般に、問診→触診→血液検査→便検査(必要に応じて)の順序で進めます。
問診では発症の状況・痛みや下痢の程度・食事の内容などを尋ねます。触診では腹部とその痛み方の様子と共に、全身の状態のチェックです。
次に血液検査を行って、炎症や感染症の有無を調べます。便と腸液、あるいは吐しゃ物を培養して、細菌やウイルスに対する抗原の有無などを検査して、診断が確定するという流れです。
病状によっては確定診断のために、さらに大腸カメラ検査を行う場合もあります。
編集部まとめ

腸炎を甘くみないでください。
腸炎は比較的ありふれた病気で、基本的には自然に治るのを待つしかない病気ですが、軽く考えてもよい病気では決してありません。
原因がウイルスであれ、細菌であれ、あるいは風邪をこじらせたのであれ同じです。
脱水症状を防ぐために水分の補給を欠かさず、病状が悪化する気配を感じたら、すぐに医師の診察と治療を受けるようにしましょう。
参考文献
腸炎|Medical Note
急性腸炎、感冒性腸炎(お腹にくる風邪)|大阪江坂・胃腸内視鏡内科クリニック
ロタウイルスに関するQ&A|厚生労働省

