「起立性調節障害はどのくらいで治る」かご存じですか?治療法を医師が解説!

「起立性調節障害はどのくらいで治る」かご存じですか?治療法を医師が解説!

起立性調節障害は、自律神経の調節機能の乱れから、朝なかなか起きられないなどの不調をきたす病気です。

学童や思春期のお子さんに多く、この病気が不登校の原因となっていることもあります。

またこの病気の症状は周囲の理解を得にくく、本人は辛い思いをしているのに、ただダラダラ怠けていると思われたり、夜更かしで朝起きられないだけと思われたりなど、誤解を招くこともあります。

今回はこの病気について、治療方法を紹介しましょう。

※この記事はメディカルドックにて『「起立性調節障害」とは?大人・症状・原因についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

武井 智昭

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

起立性調節障害の検査と治療方法

説明する看護師

起立性調節障害が疑われる場合は何科を受診しますか?

子どもに多い症状ですので、小児科を受診してください。この病気は午後にかけて改善していくことが多いので、症状が強く出ている午前中にかかるのがベストです。

どのような検査をするのですか?

まずはめまい・立ちくらみ・頭痛・腹痛・顔色が悪いなどの症状、朝体調が悪いのに夜は元気になるなど、この病気の特徴が2~3当てはまれば起立性調節障害を疑います。次に鉄欠乏性貧血やてんかんなど、似たような症状が出る基礎疾患の検査をし、除外します。起立性調節障害としての検査は、新起立試験と呼ばれる試験を午前中に実施しています。仰向けに寝て10分間安静にした時と、起立時の血圧・脈拍・血流音を調べて診断するものです。現在はこの検査により、起立性調節障害を次の4つのタイプに分類しています。

起立直後性低血圧(軽症型、重症型)

体位性頻脈症候群

血管迷走神経性失神

遷延性起立性低血圧

その後、問診で日常生活の症状や心理的ストレスを測定し、重症度を判断します。起立性調節障害で最も多いタイプは体位性頻脈症候群です。血管迷走神経性失神は、失神や立っていられないほどの立ちくらみなど、強い症状を伴います。

起立性調節障害は治りますか?

重症度によって治療期間は異なりますが、治ることが多い疾患であります。軽症の場合は治療に2~3カ月、重症の場合は2~3年完治までに要することが多いです。重症のお子さんは学校に通えていないことが多く、社会復帰には、保護者をはじめ周囲のサポートが必須となります。

治療方法が知りたいです。

薬を使わない治療がメインです。立ち上がる時、立っている時に症状が強く出るので、頭を下にしてゆっくり起立するなどの日常生活の工夫を指導します。また、水分と塩分をしっかりとる、適度な運動をするなど血液循環改善のための指導もします。そのうえで、場合によってはミドドリン塩酸塩、β遮断薬、漢方などを処方することがありますが、薬だけの効果は薄いです。そして大事なのが本人や周囲がこの病気をしっかりと理解し、決して本人の性格によって引き起こされているわけではないということを共有することです。心理的ストレスが一因となっている場合は、ストレスを取り除くようなケアに取り組む必要があります。

編集部まとめ

寄り添う親子
起立性調節障害は10歳~16歳に多く発症し、不登校の一因ともなっている疾病です。

自律神経のバランスの崩れから、朝起きられない・起きた時に頭痛や腹痛がするといった症状が現れます。

治療は自律神経の機能を整える生活環境や食生活の指導がメインになります。また、ゆっくり起き上がるなど生活上の工夫も大切です。

大人になって再発することもありますが、ほとんどは適切な治療をすれば改善します。

この病気は、朝が不調で夜になると元気になることが多いので、本人の怠慢や生活の乱れの問題と捉えられがちです。

決して本人の性格からくる問題ではないので、起立性調節障害が引き起こす症状を周囲もよく理解し、サポートしてあげることが大切です。

参考文献

学童・思春期に多い「起立性調節障害」|東京逓信病院

起立性調節障害の対策|起立性調節障害navi

子供のSOSに気づく|起立性調節障害navi

配信元: Medical DOC

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