骨折の原因は、大別すると「外傷」「疲労」「病気」に分類されます。このうち外傷が原因となるものが複雑骨折であるといえるでしょう。
複雑骨折は交通事故やスポーツ、または何らかの原因による転倒などによって起こります。
通常の骨折よりも細菌感染のリスクが高く、早急な手術が必要です。また骨折した部位によってはより難しい治療となり、治療期間が長期化してしまう場合もあるでしょう。
この記事では複雑骨折の治療方法などについて解説します。
※この記事はメディカルドックにて『スポーツの秋に注意したい「複雑骨折」とは?後遺症についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
複雑骨折の検査内容や治療方法は?

複雑骨折の診断・検査はどのように行われますか?
複雑骨折の場合、まず骨が露出している部分の皮膚や筋肉の状態を目で見て確認します。この時点で複雑骨折(開放骨折)であると診断がつくでしょう。
その後レントゲン撮影をします。さらにレントゲンに写らない部位の骨折や臓器、神経の損傷がないかを確認するためにオーダーされるのが、CT検査やMRI検査です。
CTやMRIの検査と併せて、血圧測定や血液検査などすることで全身状態を確認します。
また、複雑骨折では感染症の予防も重要です。そのため必要に応じて組織・膿(うみ)・血液を培養し細菌検査をする場合もあります。
治療方法を知りたいです。
まずは感染を起こさないために、洗浄・消毒を含めた外傷の処置が優先されます。
これは骨が感染を起こしてしまうと、その後の治療が困難を極める可能性があるためです。出血がある場合は止血し、その他全身状態を確認し治療を進めます。
感染症の確認のために創部の組織や血液などの培養検査をした場合、結果によっては抗生剤を投与します。次に行われるのが骨の修復・固定です。
複雑骨折でない場合は骨を整復しギプスで固定するか、手術によってピンやプレートなどの金属器具を埋め込み固定します。しかし複雑骨折の場合は、皮膚の傷にも配慮しなければいけません。
そのため、一般的には手術による「創外固定」が選択されます。創外固定とは折れた骨をできるだけ修復した後、骨折部から離れた部位にワイヤーを挿入しそのワイヤーを体の外で固定する方法です。
創外固定は、ギプスなどの装具が傷を受けた皮膚に触れることがないため、感染リスクを高めることなく骨の固定が可能です。その他、痛みのコントロールには鎮痛剤が処方されます。
全治何ヶ月かかるか教えてください。
骨折自体が治る、つまり骨が固まるまでは4~6週間程度ですが、全治となると数ヶ月かかる場合があります。
個人差があるため一概にはいえませんが、骨折前の状態になるまでには3~6ヶ月程度はかかるとみておいたほうがよいでしょう。
もちろん受傷した部位や年齢・体力・ケガの程度や合併症の有無によっても完治までの日数は異なります。
編集部まとめ

複雑骨折は開放骨折とも呼ばれ、折れた骨が皮膚から露出している状態、つまり骨折部分と体にできた傷がつながった状態の骨折です。
複雑骨折は、激しい衝突や高所からの落下など非常に大きな力が体に加わることによって引き起こされます。
骨が露出することで骨髄炎の発症リスクも高まるため、早急な手術が必要です。この処置が遅れ感染が起こってしてしまうと、その後の骨の回復に大きく関わります。
気を付けてはいても、事故に遭遇することは誰も予測できません。
しかし日常的に交通事故などに注意しつつ、骨折予防の対策も取り入れることで大きなケガを防げる可能性が高まるでしょう。
参考文献
「骨折」|公益社団法人 日本整形外科学会
骨折について|一般社団法人 日本骨折治療学会
骨折|日本赤十字社

