【配信映画3選】ドキュメンタリーでめぐる美術館!ナショナル・ギャラリーからプラド美術館まで

美術館映画③『プラド美術館 驚異のコレクション』(2020)

参照:https://eiga.com/movie/92283/

マドリードに位置するプラド美術館は、主に歴代の王室コレクションを収蔵しています。特別な戦略はなく、国王や王妃が心の赴くままに収集した作品たちは、開館200周年を迎えた今も、わたしたちに美の喜びを教えてくれます。

本作の特徴といえば、ティツィアーノ、ルーベンス、ボス、ベラスケス、ゴヤなどの傑作群に、カメラがぐっと接近していること。画面いっぱいに、次々と有名作品が登場するので、見終わると「え、美術館で1日過ごしたみたい!」という気持ちになりました。映像を止めて絵画に見入ったり、気になったことを調べたりしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。

作中では数え切れないほどの絵画が登場しますが、わたしが最も関心を持ったのはピーテル・パウル・ルーベンス《三美神》です。女優マリナ・サウラさんが思い出の作品として紹介していました。

ピーテル・パウル・ルーベンス《三美神》(1630〜1635)/プラド美術館ピーテル・パウル・ルーベンス《三美神》(1630〜1635)/プラド美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

マリナさんの父で、画家・作家だったアントニオさんは、プラド美術館が大のお気に入りで、3人の娘たちと毎週訪れていたそうです。ある日、姉妹を「三美神」と呼んでいたのがきっかけで、本物を見に行くことに。でも「描かれていたのは、ものすごくふくよかな金髪の女性たちだったから、ガッカリした」と、マリナさんは楽しそうに話します。

このエピソードを聞いて、わたしの胸は高鳴りました。本物を見たからこそ、幼いマリナさんの感情は「想像と違ってガッカリ」と動いたのでしょう。たいていの物事は画面上で見られる今、美術館に行く喜びはここにあるのかもしれない、と気付かされました。

2025年も、プラド美術館は類まれな美術品の宝庫として、世界中の人々を魅了しています。スペインの風土に根付きながら、芸術にまつわる学びの機会をすべての人に開いているのです。これは、芸術を愛するスペイン王家からわたしたちへの、「美の喜びのおすそ分け」なのだと思います。

スクリーンの先に広がる、果てしない美術館の世界

3つの映画を通じて、美術館は人の営みが絶えず流れ続ける場所だと感じました。作品を守る人、語る人、見つめる人......。それぞれが集まって初めて、美術館という物語が形づくられているのです。

芸術は人とともに生き続けています。だからこそ、美術館へ足を運ぶことも、映像を通して訪れることも、世界を見つめ直す時間になるはずです。スクリーンの中に広がる美の海原へ、一緒にお出かけしてみませんか?

配信元: イロハニアート

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