この騒動が浮き彫りにした「3つの構造的課題」
この議論が単なる「炎上」に終わらないのは、私たち社会が抱える根深い不均衡を可視化したからです。
一つ目は、ジェンダー二重基準の露呈です。女子トイレに男性清掃員が入ることはまれであるのに対し、男子トイレに女性が入るのは「仕方ない」とされてきた現実。これは「男性は気にしないはず」という古いステレオタイプに基づき、結果的に女性労働者に不公平な負担を強いる構造を生んでしまったのではないでしょうか。
二つ目は、労働者の尊厳と経済格差。男性清掃員を増やすのはコスト増大を招くため、女性が男子トイレを清掃せざるを得ないという清掃業の低賃金構造が問題の根幹にあると言えるでしょう。
三つ目は、企業側の「努力不足」。トイレは極めて私的な空間であり、利用者と清掃員、双方の不快を解消するために、清掃時間中のトイレの一時閉鎖や男女別シフト制の導入といった対策は、企業や施設側が努力すれば実現可能ではないでしょうか。
互いの不快はシステムで解消できる
田村淳さんの投稿は、個人の不快感から始まったものの、結果として男性側の「沈黙の不満」の可視化、女性清掃員への「不公平な負担」の露呈、企業・行政による「努力不足」の炙り出しの3点を社会に強く突きつけました。
問題解決のためには、感情論ではなく、企業・行政による「男女別清掃の標準化」と「清掃職の処遇改善」が強く求められています。互いの尊厳を守るためにも、この議論が「システムを変える」きっかけとなるかもしれません。
(LASISA編集部)

