「卵巣がんの予後」はご存知ですか?ステージ別の生存率や再発率を医師が解説!

「卵巣がんの予後」はご存知ですか?ステージ別の生存率や再発率を医師が解説!

卵巣がんは女性特有のがんで、早期発見が難しいといわれます。日本では毎年約13,000人の女性が卵巣がんと診断され、約5,000人が亡くなっています。卵巣がんは子宮頸がんや子宮体がんに比べ、発見時に進行していることが多く、予後が悪い傾向が指摘されています。しかし、病気の進行度(ステージ)や腫瘍の種類によって予後は大きく異なります。ここでは卵巣がんのステージ別5年生存率や治療法を解説します。

林 良典

監修医師:
林 良典(医師)

名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

卵巣がんのステージ別の予後


卵巣がんのステージは、腫瘍の広がり具合によって分類されます。ステージⅠ期からⅣ期まであり、数字が大きいほど進行した状態です。一般に、早期(I期・II期)で発見された卵巣がんの予後は良好ですが、進行期(III期・IV期)で発見された場合は予後が厳しくなります。それを示す指標として5年生存率がよく用いられます。以下にステージごとの5年生存率の目安を示します。

卵巣がんⅠ期の予後

I期はがんが卵巣内にとどまっている早期の段階です。手術で病変を完全に取り切れることも多く、予後は良好です。国立がん研究センターの統計によれば、I期卵巣がんの5年相対生存率は約90%にも達します。つまり、早期発見・治療できれば、約9割の患者さんが5年以上生存できている計算になります。

卵巣がんⅡ期の予後

II期はがんが卵巣から骨盤内の子宮や卵管などほかの臓器に広がった段階です。I期に比べると進行していますが、まだ骨盤の中にとどまっています。II期卵巣がんの5年生存率はおよそ75%前後と報告されています。II期でも手術で可能な限り腫瘍を摘出し、続いて化学療法を行う標準治療により、多くの患者さんで長期生存が期待できます。

卵巣がんⅢ期の予後

III期はがんが骨盤を越えて腹腔内に播種したり、近くのリンパ節に転移した状態です。
III期卵巣がんの5年生存率は約45%と報告されています。生存率が半数を下回り、予後は早期に比べて厳しくなります。ただし、治療によっては長期生存や寛解も可能です。

卵巣がんⅣ期の予後

IV期は肝臓や肺など腹腔外の遠くの臓器に転移した状態で、最も進行した段階です。5年生存率は約27%と報告されており、ほかのステージに比べ低くなります。しかし、IV期でも決して希望がないわけではありません。手術や薬物療法でがんを縮小させ、症状を和らげつつ長期生存を目指すことが可能です。

卵巣がんの種類別の予後


一口に卵巣がんといっても、腫瘍の種類によって性質や予後が異なります。卵巣がんの約90%は卵巣の表面から発生する上皮性卵巣がんで、そのなかに以下のようなタイプがあります。

漿液性がん

最も頻度が高いタイプで、細胞の形態によって高異型度漿液性がん(悪性度の高いがん)と低異型度漿液性がん(悪性度の低いがん)に分けられます。

明細胞がん

明細胞がんの約半数はI期(早期)で見つかり、進行はゆっくりですが抗がん剤が効きにくいという特徴があります。そのため、どの進行期においてもほかの組織型より予後が不良であることが指摘されています。

類内膜がん

悪性度の低い腫瘍で進行が遅く、早期に発見される例が多いです。また、類内膜がんの予後は腫瘍の悪性度によって異なり、低異型度ならよい予後、高異型度なら漿液性がん同様に再発リスクがあります。

粘液性がん

進行した粘液性がんの予後は不良で、ほかのタイプに比べ治療が難しいことがあります。局所にとどまるうちに手術で切除できれば予後はよいですが、遠隔転移を伴う場合は治療選択肢が限られます。

このように卵巣がんの予後はステージだけでなく組織型によっても左右されます。一般に、早期発見できればどのタイプでも予後は良くなります。一方、進行した卵巣がんでは漿液性がんのように抗がん剤が効きやすいタイプと、明細胞がんのように効きにくいタイプで生存率に差が出ることがあります。

配信元: Medical DOC

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