
妻夫木聡が主演を務める日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系/TVerにて配信)の第2話が15分拡大で10月19日に放送された。第1話に続いて、栗須(妻夫木)ら人々の思いがのった競馬レースが感動の涙を誘った。(以下、ネタバレを含みます)
■人間と競走馬の20年にわたる壮大な物語
同ドラマは、山本周五郎賞やJRA賞馬事文化賞を受賞した早見和真の同名小説が原作。競馬の世界を舞台に、ひたすら夢を追い続けた熱き大人たちが家族や仲間との絆で奇跡を起こしていく、人間と競走馬の20年にわたる物語を描く。
妻夫木が演じるのは、大手税理士法人に勤める税理士から人材派遣会社・株式会社ロイヤルヒューマンに転職した栗須栄治。ほか、栗須の人生を大きく動かすロイヤルヒューマンの創業社長で競馬界では有名な馬主・山王耕造を佐藤浩市、栗須の元恋人で馬の生産牧場を営む野崎加奈子を松本若菜、物語の鍵を握る重要な役どころを目黒蓮(Snow Man)が務める。

■耕造の元で秘書をすることになった栗須
競馬の世界に心を突き動かされた栗須は、耕造の誘いでロイヤルヒューマンに入社を決めた。「俺のこと絶対に裏切るな」が条件だ。経理の仕事に就くと思っていた栗須だが、命じられたのは競馬事業部の専任秘書。競馬を嫌う耕造の妻・京子(黒木瞳)の対応も仕事に含まれていた。
そんな中、若手社員からの不満を理由に、耕造の長男で人事統括本部長の優太郎(小泉孝太郎)は中央競馬で1勝できなければ競馬事業部を撤廃するよう耕造に迫った。それを受け入れてしまった耕造は、最も戦力になりそうなロイヤルファイトを勝たせるため、栗須を連れて美浦トレーニングセンターへ。しかし、耕造の強引さが調教師の反発を買って決別。栗須は、新たな調教師探しを指示された。
■栗須の調教師は困難を極める
序盤のナレーションで明かされた、一般的に国内のサラブレッドが中央競馬のレースに出るための条件。馬主が生産牧場で生まれた仔馬を購入し、育成専門の牧場で競走馬としての基礎を学ばせるところから始まる。加えて管理を委託する調教師を選び、成長とともに育成牧場からトレーニングセンターへ入れ、そこで無事に登録された馬だけが実践に挑むことができるのだという。
競馬を知らない見る側としては、その知識を得られたことで、サラブレッドたちは過酷な状況を乗り越えなければならないと一段と力が入る。
さらに、耕造と決別した調教師は預かっているロイヤルファイトとロイヤルイザーニャについて、「エリートの中に飛び込んだ庶民」とたとえ、特に左前脚にハンデがあるイザーニャについては「勝つことよりも、よく生きることを考えるべき」と言っていた。
また、1人の調教師が管理できる競走馬には限りがある。栗須の調教師探しも過酷を極める。耕造のオーナーとしての評判も良くないのだ。ただ、栗須もワンマンな耕造に言われるがままではないことが分かる場面もあった。ロイヤルファイトとロイヤルイザーニャを別々に預ける案を耕造が出したとき、「承知…できません」と答えたのだ。第1話で描かれた両馬を一緒に耕造が買い取ったエピソードにも栗須が心を動かされた一つだったからだ。
そんな中、生産馬のレースで東京に来ていた加奈子と会った栗須は、広中(安藤政信)という優秀な調教師がいると聞く。
■調教師・広中の戦略とは…
加奈子が「変わった人」と称した広中。調教師は通常「先生」と呼ばれるが、それを嫌い、馬のデータはPCに入っているものの手書きがいいとこだわる。そんな広中は、ちょうど空きがあるとのことだったが、同時期に耕造と同業で、競馬界有数の馬主の一人である椎名(沢村一樹)も調教を頼んでいた。
広中は、椎名の名馬ではなく、ロイヤルファイトとロイヤルイザーニャを選んだ。その理由はのちに明かされることになるのだが、その前に広中は驚きの提案をした。それに怒る耕造だったが、「人を信じて」2頭を買ったときのように、広中のことも信じてみてはと栗須は説得し、レース当日を迎えた。
レースで広中の戦略が判明する。競馬のコースは、芝が敷かれたコースとダートといわれる砂地のコースがある。ロイヤルイザーニャはデビュー以来、芝で惨敗していて、この1年はダート専門だったが結果が出せず、出走すらしていない状況。一方、ロイヤルファイトは一度もダートを走ったことはなかった。その2頭を入れ替え、ロイヤルイザーニャを芝の未勝利戦に出すことにしたのだ。
「これなら勝てる」と広中は考えるが、競馬としては「しんがり人気(※最低人気のこと)」だ。第1話に続いて、ドキドキのレースがスタートする。すると、ロイヤルイザーニャはすぐに先頭に立ち、「逃げ」といわれるそのままゴールが予期される態勢に。劇中だけでなく、視聴者をも興奮させたレースはロイヤルイザーニャが勝利した。
広中がこの戦略を立てた理由は、ロイヤルイザーニャの先祖に芝2000mのレースに強い馬がいたのだ。その先祖馬=マイティブラットも“逃げ馬”であり、広中の実家の牧場の馬でもあった。これまでロイヤルイザーニャは左前脚を気にして中距離レースを回避してきたと思われるが、血統を考え「たっぷりと自由に走らせたほうがいい」と思った広中。そしてロイヤルイザーニャとロイヤルファイトそれぞれの特長も踏まえたうえで、勝つ確率を優先したこともあった。
命がつながれてきたサラブレッド、そして人々のつながりを背景に、またしても胸が熱くなる展開だった。SNSには「泣いた」「鳥肌立ちまくり感動しまくり回だった」「ドラマの演出と分かってても叫んだ」「ドラマ観ながら競馬のレース体験できるなんて最高」などの声が上がった。
ラストで耕造は「有馬記念で勝つこと」が夢だと言った。日本ダービーや他のG1は強い馬が競い合うが、有馬記念は「強いだけじゃ選ばれない。ファンに愛され、その走りを認められた馬だけが選ばれるんだ。そしてその中で1着を決める。情がある。愛がある」と。その日まで、どんな馬と人間のドラマが展開するのか楽しみだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

