“重大発表”の皮肉と楽曲の評価問題
しかし、このようなプロモーションには落とし穴があります。それは、彼らにまつわるあらゆる出来事を、さも“重大”なものとして宣伝し続けなければならないという“辛さ”です。ほとんど同じことをしているのに、わざわざ「フェーズ」という言葉を使って、あたかも局面が変わったかのように見せる必要があるのも、その表れなのかもしれません。そして、何よりも皮肉なのは、彼らのニュースがさも“重大”であればあるほど、彼らが発信する楽曲自体の印象が薄れていくという現象が起きています。バズればバズるほど、楽曲の評価や魅力よりも彼ら自身の存在や言動に対する賛否が中心になります。
たとえば、MVの中での人種差別的な表現が問題となった「コロンブス」に関しても、議論は音楽そのものではなく、表現の適切性についての批判に集中しました。今回の「重大発表」についても、ある意味ではいつものことだと言えるでしょう。
Mrs. GREEN APPLEはこうした独特なアプローチで、頂点に上り詰めたアーティストなのではないでしょうか。結果として、一にも二にも、アテンションを獲得すること。だからミセスは極めて如実に現代を象徴するアーティストなのです。<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

