「排尿時に痛みがある」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「排尿時に痛みがある」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
膀胱炎
膀胱炎は、大腸菌などの細菌が尿道を通って膀胱に入り込み、炎症を引き起こす病気です。特に女性に多く見られます。主な症状は、排尿の終わりごろの痛み、頻尿、残尿感、尿の混濁、血尿などです。
治療は、原因となっている細菌に有効な抗菌薬の服用が基本です。通常、服薬開始後数日程度で症状は改善します。予防には、水分摂取、排尿の我慢をしない、下半身の保温、清潔を保つことなどが有効です。症状があれば、泌尿器科、内科を受診してください。
尿道炎・クラミジア尿道炎・淋菌性尿道炎
尿道炎は、尿の通り道である尿道に炎症が起こる病気で、男性に多いとされています。原因は、性交渉によるクラミジアや淋菌の感染が代表的です。排尿時の焼けるような痛みや、尿道から膿が出るという特徴的な症状が現れます。
クラミジアの場合は症状が軽いこともあり、感染に気づかないまま経過することもあるため注意が必要です。放置すると、不妊や前立腺炎の原因となることもあります。治療には原因菌に応じた抗菌薬が必要で、パートナーも同時に検査・治療が必要です。疑わしい症状があれば、泌尿器科や性感染症内科を受診しましょう。
前立腺炎
前立腺炎は、男性特有の臓器である前立腺が炎症を起こす病気です。
細菌感染により症状が急に発症する急性細菌性前立腺炎、細菌感染により症状が繰り返し起こる慢性細菌前立腺炎、細菌感染以外の炎症が慢性化する慢性非細菌性前立腺炎があります。症状は多彩で、排尿時痛、頻尿、残尿感のほか、会陰部や下腹部の鈍痛、射精時痛などが見られます。急性細菌性前立腺炎では高熱を伴うこともあります。慢性細菌性前立腺炎、慢性非細菌性前立腺炎は会陰部の違和感などの症状がでることがあります。
治療は、細菌感染が原因となる場合には抗菌薬の投与が中心となります。慢性非細菌性前立腺炎の場合は鎮痛剤や漢方薬も使用した長期間の治療が必要になることも少なくありません。生活習慣の改善(長時間の座位を避ける、禁酒など)も重要です。気になる症状があれば泌尿器科を受診してください。
尿路結石
尿路結石は、腎臓で作られた結石が尿の流れ道(尿管、膀胱、尿道)に移動し、さまざまな症状を引き起こす病気です。結石が尿管の狭い部分に詰まると、突然、片側の腰や脇腹に激しい痛みが起こります。この痛みは「疝痛発作」と呼ばれ、数十分から数時間続くことがあります。血尿や吐き気を伴うことも多いです。結石が膀胱や尿道にある場合は、排尿時痛や頻尿の原因となります。治療は、結石の大きさに応じて、水分を多く摂って自然に排石されるのを待つ方法や、体外衝撃波や内視鏡で結石を砕く方法があります。激しい痛みがある場合は、すぐに泌尿器科を受診しましょう。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、細菌感染が原因ではない、膀胱の粘膜に原因不明の炎症が起こる病気です。頻尿、尿意切迫感(急に強い尿意を感じる)、そして尿が溜まったときに膀胱や下腹部が痛むのが特徴で、排尿すると痛みが和らぐ傾向があります。通常の膀胱炎と症状が似ていますが、尿検査で細菌が見つからず、抗菌薬が効かない場合も多いです。診断や治療が難しい病気の一つで、泌尿器科医による診察が必要です。
腎盂腎炎
腎盂腎炎は、膀胱炎が悪化し、細菌が尿管を逆流して腎臓の中にある腎盂という部分で感染・炎症を起こす病気です。膀胱炎の症状(排尿時痛、頻尿など)に加えて、38℃以上の高熱、悪寒、背中や腰の片側を叩くと響くような痛み(叩打痛)が特徴です。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。重症化すると敗血症にいたり、命に関わることもあるため、迅速な治療が必要です。治療は、抗菌薬の点滴や内服で行いますが、症状が重い場合は入院が必要となります。腎盂腎炎が疑われる症状があれば、直ちに内科や泌尿器科を受診しましょう。
「排尿時に痛みがある・排尿痛」の正しい対処法は?
生活習慣で改善できることはあるか?
排尿時の痛みの原因によっては、生活習慣の見直しが症状の緩和や予防につながります。まず、体を温めることは重要です。体が冷えると血行が悪くなり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。腹巻をしたり、温かい飲み物を摂ったり、ゆっくり入浴したりする習慣をつけましょう。また、十分な睡眠と休息をとり、ストレスを溜めないことも免疫力を維持するために不可欠です。特定のツボやマッサージが直接的に排尿痛を治すという科学的根拠はありませんが、リラックス効果を高めることは心身の健康にとって有益です。
水分は多めに摂取した方が良い?
膀胱炎などの尿路感染症や尿管結石の予防の観点では、水分を積極的に摂取することが推奨されます。尿の量を増やすことで、膀胱内にいる細菌を物理的に洗い流す効果が期待できます。1日に1.5リットルから2リットルを目安に、水やお茶などをこまめに飲むようにしましょう。
ただし、心臓や腎臓に病気があり、医師から水分摂取の制限を指示されている方は、必ずその指示に従いましょう。
逆に、頻尿症状が強く、生活に支障が出ている間質性膀胱炎などの場合は、水分摂取量の調整が必要なこともありますので、泌尿器科医に相談しましょう。
性感染症による排尿痛を防ぐポイントはある?
クラミジアや淋菌などの性感染症による尿道炎を防ぐためには、予防が最も重要です。不特定多数との性交渉は避け、新しいパートナーとの性交渉の際には、正しくコンドームを使用することが、感染リスクを大幅に減少させます。
もしご自身が感染した場合は、パートナーも無症状で感染している可能性があるため、必ず一緒に検査と治療を受けることが重要です。
早く症状を改善したい場合はどうすれば良い?
排尿時の痛みを最も早く、そして確実に改善する方法は、医療機関を受診し、原因に応じた適切な治療を受けることです。特に細菌感染が原因の場合は、抗菌薬が必要なケースが多いです。
市販薬の中には、膀胱炎の症状を緩和する目的の漢方薬などがありますが、これらはあくまで症状を和らげる対症療法であり、原因となる細菌に対する効果は限定的です。
市販薬で一時的に症状が軽快したとしても、重症化を防げないこともあります。特に、発熱や強い痛み、膿が出ている場合に市販薬で様子を見るのは危険です。排尿時の痛みに気づいたら、まずは医師の診断を受けることを強くお勧めします。

