ハンセン病についての正しい知識

ハンセン病を発症した場合に隔離は必要ですか?
先に述べたように、らい菌の感染力はとても弱いため、隔離の必要はありません。感染経路や治療法が確立される以前は、身体の変形を伴うことから、ハンセン病は一度発症すると治らない病気というイメージが根深くありました。間違った知識の波及により、患者さんは社会的偏見を受け外界から閉ざされた環境に置かされた歴史があります。
専用の療養所が設置されていた理由を教えてください
かつてハンセン病への理解が進まなかった頃、ハンセン病患者さんは家族や周囲の人々から病気をうつす存在として恐れられていました。ほかの方の迷惑になるまいと人目を忍んで暮らしたり、放浪したりした方も多くいます。1907年に、国はらい予防に関する法律を制定しました。患者さんのケアや人権保護などを考慮する意図もありましたが、人々にはハンセン病は感染しやすく隔離が必要と間違ったイメージが定着し、差別を生むことになりました。地方政策としてハンセン病患者さんを強制隔離させる運動も積極的に行われ、ハンセン病患者さんに対する隔離意識が国全体で高まっていきます。1931年にはハンセン病を撲滅する名目のもと、らい予防法が制定されました。国はハンセン病療養所を設置し、ハンセン病患者さんへ入所を強いました。1996年に、らい予防法が廃止されるまでの長く続いたハンセン病患者さんに対する強制隔離の暗い歴史の始まりです。らい予防法廃止以降は、患者さんは国立療養所へ強制的に入所させられることはなく、一般病院で治療が行われています。
ハンセン病は遺伝しますか?
ハンセン病はらい菌による感染症であり、遺伝しません。しかし、かつて遺伝性疾患と誤解され、1948年には優生保護法のもとで患者さんが避妊手術を強いられました。
編集部まとめ

誤った理解から、ハンセン病患者さんには隔離政策がとられ、精神的苦痛を強いられた悲しい歴史がありますが、現在は治療法も確立しているうえ罹患も極めて稀な病気です。
らい菌に感染し発症するハンセン病ですが、らい菌は潜伏期間が長く、感染力が弱いことから必ずハンセン病を発症するとは限りません。
症状は、主に皮膚病変と末端神経障害で、治療は抗ハンセン病薬の内服が基本です。
治療開始後のらい反応の症状を軽減させるためステロイド療法も併用されることがあります。感染症であり、遺伝性疾患ではありません。
本記事で、ハンセン病に関する正しい医療知識を得る手助けとなれば幸いです。
参考文献
ハンセン病問題を知っていますか?
らい菌(Mycobacterium leprae)|日本細菌学会
ハンセン病とは|NIID国立感染症研究所
らい菌の感染, 潜伏とハンセン病の発症までの背景|NIID国立感染症研究所

