染谷将太“歌麿”の抱える「欲」とは…横浜流星“蔦重”への複雑な心中がにじむ<べらぼう>

染谷将太“歌麿”の抱える「欲」とは…横浜流星“蔦重”への複雑な心中がにじむ<べらぼう>

厳しい目つきをする歌麿(染谷将太)
厳しい目つきをする歌麿(染谷将太) / (C) NHK

横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第40回「尽きせぬは欲の泉」が10月19日に放送された。蔦重(横浜)から絵を依頼された歌麿(染谷将太)。副題にも組み込まれている、歌麿に潜む“欲”が視聴者の注目を集めた。(以下、ネタバレを含みます)

■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く

森下佳子氏が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。

蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、曲亭馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。

美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太、蔦重の妻・てい役で橋本愛らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。

■蔦重は歌麿に「女の大首絵」を描かせることを思い付く

のちの曲亭馬琴となる滝沢瑣吉(津田健次郎)、のちの葛飾北斎となる勝川春朗(くっきー!)と、あらたなキャラクター登場にも沸いた第40回だが、やはり展開の核となったのは蔦重と歌麿だ。

風紀を乱す本を出したとして、財産などの半分が没収される「身上半減」の刑が下された蔦重。「身上半減の店」として客を呼び込んだものの、物珍しさだけでは長く続かない。そこで、内容は面白いが、古くて摺られなくなった他店の黄表紙の版木を安く仕入れて出す「再印本」を考えたり、蔦重と同じく刑罰を受けて新作を書かなくなった山東京伝(古川雄太)の名で瑣吉と春朗に黄表紙を書かせたり。

また、松平定信(井上祐貴)の政により、各本屋が出す新作は少なくなり、黄表紙は教訓的に、狂歌は格調高いものに、錦絵は相撲絵や役者絵が増えていた。定信の望んだどおりの流れではあったが、黄表紙好きの定信自身がどこか寂し気だったのは気のせいだろうか。それはさておき、蔦重は歌麿が「女の大首絵」を描けば、そのどこか沈んだ流れを打破できるのではないかと思い付いた。

大首絵とは、人物の顔や上半身を強調したもので、役者はあったが、女性のものはなかった。蔦重いわく「女の顔は皆同じに描くし、表情もねえ。それを大きくしたって面白くねえ。だから誰もやんなかった」が、亡き妻・きよを何百枚、何千枚と描いていた歌麿なら表情が出せると思ったのだ。

■蔦重に反論する歌麿

自分と距離を置いて栃木まで絵を描きに行っている歌麿を呼び戻すには「案思(※作品の構想のこと)」が必要。蔦重は、美人と評判の看板娘がいる店を見て回るが、単に美人を描くというだけでは足りないと悩んでいると、ていと義兄・治郎兵衛(中村蒼)の会話から、吉原で流行しているという、顔形で人の性分が分かるとされる「相法(相学)」を取り入れてはどうかとひらめいた。

栃木まで出向いた蔦重は、歌麿の妻が亡くなったときの失言を詫び、錦絵を描いてほしいと頼み、成功すれば「当代一の絵師になれる」と語った。すると案の定というべきか、歌麿の返しは冷たいものだった。「私のためのように言いますけど、つまるとこ、金繰りに行き詰っている蔦屋を助ける当たりが欲しいってだけですよね」。

まさにそのとおりでもあって、蔦重は息をのむ。さらにかつての関係から線を引こうとしていることを感じ取ると、「一本屋として」と切り替えた。相学を取り入れた美人画のためには、「女のタチが伝わる絵を描ける絵師」が必要なのだと頭を下げる蔦重。

すると「もう女は描かねえって決めてんで」と歌麿。きよが生前に「自分だけを見ていてほしい」と願ったからだ。それに「生きてる間はってことだけだよ」と蔦重が口を挟むと、歌麿は「おきよのことなんてなんも知らねぇだろ!」と声を荒げた。

しかし蔦重はひるまない。「知らねえよ。けど、この世でいっちゃん好きな絵師は同じだからよ。お前の絵が好きなやつは、お前が描けなくなることは決して望まねぇ。これは間違いなく言い切れる。贔屓筋ってなぁ、そういうもんだ」と語った。

■蔦重との切ない距離…歌麿の複雑な心中を染谷将太が見せる

蔦重の言葉に心が動いた歌麿は江戸に戻り、女の大首絵に取り掛かった。だが、“心の距離”が戻そうとしているわけではないことが分かる場面があった。

蔦重から何度も出される難しい要求にもなんとか応えていく歌麿は、蔦重が煙草を吸う仕草を見て、「小道具、使うってなあ、どう?」と思い付く。煙管、手鏡、手ぬぐい、提灯、ポッピン…。それらを扱う仕草には人柄が出やすいという。そのアイデアを気に入った蔦重は、昔のように歌麿の肩に手を回した。ところが歌麿は、すっと体をずらした。「肩が凝っててさ」との言い訳を真に受けた蔦重は肩を揉もうとすると、「そういうのはよしとくれよ!」と嫌がった。

蔦重が煙草を吸うところを見る目には、どこかいとおしさが宿っているようだった。しかし、過度な接触は嫌がる。歌麿の複雑な心中が伝わる。このあたり、何度も思わされてきたことであるが染谷将太の演技のすばらしさが光る。

その後、「書きたい欲」に駆られて再び本の世界に戻って来た京伝こと政演から、「歌さんはどうだい?」と問われると、「欲なんて、とうに消えたと思ってたんだけどなぁ」と答えた。その直後に瑣吉が歌麿には「男色の相」があると蔦重やていのいるところで話していた。それらを“暗示”とするならば、過去に描かれたことからも蔦重に単なる恩人として以上の思いが残っているのではないか。

視聴者からも「歌麿の欲は絵のことだけじゃないよね」「歌麿はまだ蔦重に惚れてる…」「封印していた蔦重への想いが再燃した?」「切ないなぁ」と思いやる声も上がった。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

提供元

プロフィール画像

WEBザテレビジョン

WEBザテレビジョンは芸能ニュース、テレビ番組情報、タレントインタビューほか、最新のエンターテイメント情報をお届けするWEBメディアです。エンタメ取材歴40年以上、ドラマ、バラエティー、映画、音楽、アニメ、アイドルなどジャンルも幅広く深堀していきます。