砂場で遊んでいた時、自分の子に肩が当たっただけで真理の息子・ナオトを謝らせたママ友の香。真理は彼女の子育てスタンスに、違和感を持ち始めます。
園でも見えたママ友の本性
香さんの子育てスタンスは、とにかく「我が子には指1本たりとも触れさせない」だった。少しでも子どもたちに被害があれば、駆けつけて助ける。その様子は園生活でもよく見られた。お迎えの時、他の保護者が香さんに、ひたすら謝る場面に出くわしたことがある。
「おもちゃを取ったくらいで裕也を叩くなんて、信じられないですよ。どんな教育をしてます?」
「す、すみません」
子ども同士のトラブルに、また口を出している。嫌なものを見たな…と思う私の背後で、彼女の噂話をする保護者同士の会話が耳に入った。
「あの人ってトラブルメーカーね。ちょっとでも子どもが叩かれたら、すぐに相手の子や親にも怒鳴りつけてるよ」
「先生も苦労してるみたい。小さなけがでも、即電話がくるらしいよ」
子どものためならすぐに駆けつけ、行動するママ。一見よい母親像に見えるが、彼女の場合は行き過ぎのように思えた。
遊びの中、叩いてしまうトラブルが発生
そんなある日、事件が起きた。いつものように、マンション前の公園で遊ぶナオトと勝也くんたち。私と香さんはベンチでお喋りをしていた。
子どもたちは今日はブランコで遊び、2つしかないそれを、うまく交代して楽しんでいる。しかし、そのうち順番が滞ってしまう。今は勝也くんと裕也くんが乗り続け、ナオトは待ち続けていた。
「僕も乗りたいよ~」
「まーだまだ!」
勝也くんは、立ち漕ぎまでし始めた。「小さい子には譲るのよ」と教えていたせいか、ナオトは裕也くんには声をかけない。自分ばかり急かされるのが気に食わなくなった勝也くんは、突然ブランコから降りると、そのままナオトに近づいて肩を強く押した。
「ナオト、うるさい!」
7歳の力で押されては、背が高いとはいえまだ5歳のナオトはよろけてしまう。私は「あっ」と驚いて腰を浮かせた。香さんも、気づいてそちらを見る。
「な、何するんだよ」
「俺ばっかり急かすな!うるさい!」
勝也くんはついに、ナオトの頭を強く叩いた。ナオトはショックのあまり、泣きそうになる。

