デビュー作の『ケチャップマン』と人気シリーズ『しごとば』
『ケチャップマン』 文芸社ビジュアルアート 2008年 / ブロンズ新社 2015年 展示風景 撮影:はろるど
『ケチャップマン』とは鈴木のりたけの絵本作家としてデビュー作です。身体がケチャップでできたケチャップマンが、自分にしかできない何かを探し、悩んでいた毎日、自分にぴったりのポテトフライ専門店と出会い、アルバイトとして働きはじめます。
これは鈴木が前職のグラフィックデザイナーの時に描かれた作品ですが、「働くとは何だろう」という根源的な問いや、デビュー前に奮闘する彼の心境を感じることができます。
『しごとば』シリーズ 原画 2009〜2020年 ブロンズ新社 展示風景 撮影:はろるど
『しごとば』シリーズは、パン職人らの「作る人」や、考古学者などの「調べる人」、そしてオーケストラ団員といった「伝える人」など、さまざまなプロフェッショナルを訪ねて取材し、その仕事の内容や道具などを絵本で伝えた作品です。
そこには仕事場などがリアルに描かれていますが、それぞれの人の仕事が一つの画面でぱっと分かるように再構成されるなど、鈴木の絵本作家としての卓越した力量も伺い知れます。
会社員から絵本作家の道へ。鈴木のりたけの絵本作りの信念とは?
鈴木のりたけ「大ピンチ展!プラス」会場写真 撮影:はろるど
大学卒業後、JR東海に入社して新幹線の運転免許を取得するものの、1年9ヶ月で退職し、その後、広告の制作プロダクションでグラフィックデザイナーとして研鑽を積んだ鈴木のりたけ。自分から生み出す仕事をしよう、自分の署名がつくものを残そうと思い、少しずつ自分の家で絵を描きはじめ、いつしか絵本のようなものを作ったと言います。
そして絵本のコンペに応募。文芸社ビジュアルアート出版文化賞のコンテストに『ケチャップマン』が入賞し、絵本として刊行され、本格的に絵本作家の道を歩みはじめました。
鈴木の絵本作りにおける信念は、「作り手自身が面白いと思えること、読む人が価値や面白さを見出すこと」にあります。それは今回新たに挑んだ展覧会という舞台でも、エンターテイナーとしていかんなく発揮されていると言えるでしょう。
