
ソン・ジュンギとチョン・ウヒがW主演する韓国ドラマ「マイ・ユース(My Youth)」(FODにて韓国の放送と同タイミングで独占配信中。毎週金曜に2話ずつ追加/全12話)の第11話が10月10日、最終話となる第12話10月17日に配信され、余韻でいっぱいのラストシーンとなった(以下、ネタバレを含みます)。
■初恋同士の2人の恋が15年ぶりに動き出すロマンチックストーリー
本作は、15年ぶりに再会した初恋の相手同士の男女が、それぞれ異なる世界で人生を歩む中で互いの立場の違いに戸惑い葛藤しながらも、過去の記憶と向き合い、新たな愛を築いていく姿を描くロマンチックストーリー。
■「後悔は、後で時間がある時に」
「キミといつどこでどう出会っていても、引き返さなかった。引き返せなかった。この気持ちは」と愛を伝えたヘに、ジェヨンは「最後まで行こう。間違える時もあるけど、後悔は後で時間があればすることにしない?」と前向きな提案をして、2人の絆はさらに強くなった。
そんな中、ジェヨンはヘの店で、海外での臨床試験のパンフレットを見つけた。参加すれば治る可能性があるのかと尋ねた彼女に、へは「それはわからない」と正直に答え、最近体調が良くないし、自分は進行が早い方らしいと告げた。彼は淡々と自分の状況を受け止めているが、ジェヨンはまだそうはなれない…。暗くなった彼女に気付いたへは、新薬もどんどん出ているし、何よりジェヨンが一緒に居てくれるから、と逆に慰めるのだった。「キミのためにもこの状況を突破する」と言った彼に元気よく抱きつき、明るい笑顔を見せるジェヨン。だが内心は、しばらく遠距離恋愛になるかもしれないことに不安を感じていた。

■発作に苦しむへに寄り添うジェヨン
修学旅行に1度も行ったことが無い彼と、ジェヨンは2人きりの“修学旅行”をすることにした。楽しく過ごしていたが、少しでも彼の姿が見えなくなると、何かあったのでは…と不安になり必死で探してしまうジェヨン…。1度は思い過ごしだったが、夜中に目が覚めた時、隣で寝ていたはずの彼は居なかった。浴室で1人発作に耐えていたへを見つけたジェヨンに、こんな姿は見せたくないから来るな、と言うヘ。「イヤ」と言う彼女に、彼は「だったら電気をつけないで」と頼み、ジェヨンは暗い浴室で彼の隣に横たわって手を握った。
そして、彼の手首のミサンガを見て、どんな願いをしてるのかと尋ねると、彼は「切実な願い」と答えた。彼女はミサンガをほどき、「ジャーン。叶ったよ」と言って、ヘを笑わせた。「明日もまた笑う?」と言う彼女の手首に彼はミサンガを巻き、2人は何度も何度もキスをした…。
「大丈夫?」や「私が付いてるから」などの心配や励ましの言葉を言わなかったジェヨン。彼の苦しみがわかるからこそ、そんなことは言えなかったのだろう。それよりも隣で同じように横たわり、本当は心配で不安で泣きたいはずなのに笑顔を見せる彼女は、一緒に今を乗り越えようという想いが溢れていて、とてつもなく深い愛を感じた。ヘにとっても、そんな彼女が苦痛を和らげる一番の薬なのだ。

■へ、危篤…
クリスマスが近づいた頃、ヘが倒れ、危篤状態に陥った…。知らせを受けて、への父・チャン(チョ・ハンチョル)、彼の妻・ピルドゥ(チンギョン)が駆けつけ、ジェヨンと共にヘがまだ逝かないように祈る中、医師がやって来て、自発呼吸ができるようになった、と告げ、一同はほっとするのだった。
意識が戻ったへを病室に訪ねたヌリ(チェ・ジョンウン)は、病気について隠していたことを怒り、だから母親のところに行けと言ったのかと号泣した。その場に居たソクジュもつられて、ヌリ以上に号泣。そんな彼を見て「アンタは泣かないで!私を慰めてよ!」とさらに泣くヌリ。「オレも慰めろ!我慢してたんだ」と言い返すソクジュ。小さな子供のように泣きじゃくりながらケンカする2人の間に挟まってオロオロするヘ…。哀しいシーンのはずなのに、笑ってしまった。そして、泣きながら手を繋いで帰っていく2人が微笑ましかった。この作品は、深刻なシーンでも暗くなりすぎない演出で、気持ちがどん底まで落ちるギリギリで救われるのも良いところだ。

■海外の臨床試験
2人が帰った後、病室に来たジェヨンに、ヘは初のクリスマスデートがダメになったことを謝ったが、彼女は「ウチは仏教だから平気」と言って笑わせた。そして、話題は海外での臨床試験に。医師は体調が回復したらすぐに出発することを提案しているが、その薬が効くかどうかはわからない。効いたとしても薬が承認されるまで数年かかる為、体がもつかは未知数なのだそう。「死ぬとしても、大切な人たちとここに居たい」と言う彼に、「ダメ。行かなきゃ」とジェヨン。彼女は、一緒に行くことも考えたが、最初のうちは外国で2人で過ごすのが楽しくても、そのうち相手を犠牲にしていると思い始めるだろう…特にヘの方が強くそう思うはずで、そうなれば2人ともすり減っていく、と現実的に考え、自分は韓国に残ることに決めていた。そして、「とりあえず、いい未来を約束しよう」と、離れていても心は繋がっていることをお互いに誓うのだった。
ジェヨンは、テリン(イ・ジュミョン)に、誰にも話せなかった不安な気持ちを打ち明けた。外国で何かあったら…。会えなくても生きてさえいればそれでいい、と言いながらも「すごく怖い」と本心を明かしたジェヨンを、テリンは抱きしめた。ジェヨンにテリンが居て本当に良かった。多くを語らなくても彼女のことを理解してくれるテリンは、ジェヨンが唯一何でも話せる親友以上の大切な存在だ。
事情を知ったテリンは、後日へに会った時、子役時代に彼が突然消えた時のことを語り、「きっと彼(ヘ)は泣かない。だから私も我慢しようと思った」と告げた。だから、今回も泣かない、と。「お別れか?」と言うヘに「まさか。また会うけど?」といつものように生意気な態度で彼を見送った。彼女なりの優しさだ。
そして、ヌリもバイトで小遣いを貯めて、ヘに大きなスーツケースをプレゼントした。「小遣いがあるのにバイトまでして…」とヌリを気遣うへに、彼女は「節約はもうやめなよ。抱えこむのも。“痛い”“つらい”って表に出してよ」と、もう守られるだけの妹ではない頼もしさを見せた。
一方、チャンは考えた末にヘに付き添って外国に行く決断をした。への母の死後、無責任で未熟だった自分を責め続け、息子に憎まれながらも関係を修復しようと努力を重ねてきたチャン。そんな夫の選択をピルドゥは受け入れた。への母と結婚する前に付き合っていた2人は、いったんは別れたが再び結ばれたのだった。「キミは僕と居て幸せだったのかな?僕なんかと何がしたかったのかな?」と言うチャンに、「愛」と答えたピルドゥ。そして、「あなたが戻って来た時、私の気持ちが今と同じなら、また愛し合いたい」と告げた。お互いを想う美しい大人の別れだった。
ヘの周りの人々は皆、自分なりの方法で彼を愛し、それぞれがお互いを想い合っている。“ヒール”が居ない世界は、哀しみの中でも安らぎを生んでいる。
■それぞれの日常
ヘが旅立った後、ジェヨンは彼に宣言したように、悲観しないようにして、今まで通り彼を想いながら日常を過ごした。正式契約はしていないもののテリンのマネージャーとして忙しく働き、ヘから預かった鍵でフラワーショップの花の世話も続けた。
ヌリは、大学は別々になったがサラン(パク・ジェヒョン)との交際を続け、ソクジュもテリンの尻に敷かれながら良い関係が続いていた。チャンはへの小説の出版パーティーのために予定を早めて帰国。それぞれがそれぞれの日常を暮らしていた。
ジェヨンは、事あるごとにへとの思い出を振り返っていた。へとジェヨン、テリンとソクジュの4人で集まり他愛もない会話を楽しんでいる夢を見た時、隣に居るヘがあまりにもリアルで、夢なら目覚めたくないと願った。が、郵便配達の声で現実に戻されてしまった。
届いた手紙は、へからだった。想いが綴られた手紙を読むへの声に乗せて、これまでの2人の恋が次々と映し出された。

■「休暇中」のプレートを「CLOSED」に替えたのは…
外出したジェヨンが店に戻ると、「休暇中」だったプレートが「CLOSED」に変わっていた。一体誰が…?鍵のかかっていないドアを開けて店内に入ると、奥から鉢植えを抱えたへが。彼女と目が合った彼は「やあ」と笑顔を見せた。帰国は来月のはずなのに…。彼女の問いには答えず、「花が咲いたよ。見に行こう」と言うヘ。「本物…?これも夢?」と戸惑うジェヨンに、鏡を指差して「写ってる」と笑うへ。「影もある」と言うが、「写真にも写る?」とまだ信じられないジェヨン。
視聴者も同じ気持ちだった。旅立った後、へとジェヨンのやり取りのシーンはいっさい無かったし、外国での彼の状況はチャンからも語られなかった。状況が飲み込めない…。予定を早めて帰ってきた?本当に?
「そろそろ挨拶してよ」と両手を広げるへ。おそるおそる近づき、彼をハグしたジェヨンは、「本物だ。あったかい」と、やっと本物だと確信した様子。そんな彼女に改めて「やあ」と挨拶したへ。それに応えて「やあ」と笑顔を見せたジェヨン。2人は力いっぱい抱きしめ合った。
「またどこかで幸せな気持ちで、何度でも会えますように。ソンウ・ヘより」―手紙の最後の言葉が彼の声で読み上げられた。
これが本当に現実なのかは、わからない。臨床試験が上手くいったかどうかもわからない。でも、真実が何かなんて重要ではないと思えた。ジェヨンにとって現実で、今この瞬間、彼女が幸せなら、それでいい。ヘが「悪い方に賭ける」のはやめたように、私たちも良い方に賭けよう。15年ぶりに“再開”した2人の「美しい世界」は、この先の15年…それ以上に続いていくのだ。視聴後、余韻がいつまでも続き、良い小説を読んだような気持ちになった。
◆文=鳥居美保


