ステージ4肺がんが骨に転移した場合の症状

骨転移が起こると強い痛みや病的骨折、神経圧迫による麻痺などが見られます。また、骨以外の部位への転移によってもさまざまな症状が現れることがあります。
骨転移によって生じる症状
骨に転移が起こると、その部位に強い痛みが生じることが多く、痛みのために日常動作が制限されることもあります。骨ががんに浸食されてもろくなっているため、通常では骨折しないような軽い力でも骨折(病的骨折)を起こしやすくなります。
特に、背骨(脊椎)に骨転移が及ぶと、腫瘍が脊髄を圧迫して手足のしびれや麻痺(歩行困難など)を引き起こすことがあります。これは脊髄圧迫症候群と呼ばれ、放置すると永久的な麻痺につながる重篤な合併症です。さらに、骨が破壊される過程で大量のカルシウムが血中に放出されると高カルシウム血症という状態になり、食欲不振、便秘、せん妄や意識障害など全身症状を引き起こすことがあります。これら骨転移による症状や合併症は患者さんの生活の質(QOL)を大きく損なうため、早めの対処が重要です。
そのほかの症状
骨転移以外にも、肺がんが進行することでさまざまな全身や呼吸器症状が現れます。典型的な症状には、長引く咳や痰、血痰(痰に血が混じる)、胸の痛み、身体を動かしたときの息苦しさ(呼吸困難)や動悸、発熱などがあります。肺がんが肺内で大きくなると呼吸機能が低下し、慢性的な息切れや疲労感を生じることもあります。
また、食欲低下や体重減少などの症状が出ることも少なくありません。さらに、肺がんは骨以外にも脳、肝臓、副腎、リンパ節など臓器にも転移しやすく、それぞれ転移先に応じた症状を引き起こします。ステージ4ではこのように複数の症状が重なりやすいため、 症状の緩和と生活の質の維持が治療と同じくらい重要になります。
ステージ4肺がんにおける骨転移の治療法

骨転移への治療は、痛みの緩和や骨折の予防や機能維持を目的として行われます。薬物療法や放射線療法、外科的治療などを組み合わせることで、QOLを高めることが可能です。さらに、肺がん本体に対する薬物療法や緩和ケアも重要な役割を担っています。
骨転移の治療法
骨転移による痛みや骨の脆さに対しては、いくつかの方法で治療および緩和を行います。まず薬物療法として、骨転移による骨破壊を抑える骨修飾薬が使用されます。骨修飾薬にはビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体薬があり、破骨細胞の働きを抑制して骨吸収と骨形成のバランスをとり、骨折予防効果を発揮します。また、痛み止めとして消炎鎮痛剤(NSAIDs)やモルヒネなどのオピオイドなどが症状に応じて使われます。
次に、放射線療法では骨転移巣にピンポイントで放射線を照射することで痛みを和らげたり、脊椎転移で脊髄圧迫による麻痺症状がある場合に腫瘍を縮小させたりして症状を緩和します。さらに、外科的治療(手術)によって、腫瘍による神経圧迫を除去したり、骨を補強する骨固定術を行ったりすることで、骨折や麻痺の予防や改善を図ることがあります。
肺がんの治療法
ステージ4肺がんでは薬物療法が中心となります。薬物療法には大きく分けて細胞障害性抗がん薬(化学療法)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法)があります。これら治療から、患者さんごとの体力・副作用耐性を考慮し、レジメンを選択します。再発時にも化学療法を行うなど、薬物治療を中心に治療を継続します。また、肺がん自体の治療に加え、痛みや呼吸困難といった症状を和らげる緩和ケアを早期から併用することも推奨されています。緩和ケアはモルヒネなどによる痛みのコントロールはもちろん、心理的な支援や在宅療養のサポートまで含まれる包括的な治療です。

