
三谷幸喜が25年ぶりにゴールデン・プライム帯の民放連続ドラマの脚本を手がけると聞いて期待が高まったドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(毎週水曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信※FODプレミアムでは毎週放送終了後から次週のエピソードを先行独占配信)。1984年の渋谷が物語の舞台となっており、三谷自身の経験に基づいたオリジナルストーリーが描かれる。現在、ドラマは第3話まで放送済み。菅田将暉を主演に迎えた三谷節全開の本作の魅力を探っていきたいと思う。
■蜷川幸雄に憧れる主人公役で菅田将暉の熱量に圧倒される
菅田が演じるのは、蜷川幸雄に憧れる演出家の卵・久部三成。この設定を知った時、蜷川幸雄が演出を手がけた舞台を何度も観たことがある筆者は思わずニヤリとしてしまった。蜷川幸雄は2016年に他界しているが、現代劇からギリシャ悲劇やシェイクスピアまで幅広い作品の演出を担当していたことで有名だ。ちなみに菅田も蜷川が演出を手がけた舞台「ロミオとジュリエット」で主役のロミオを演じたことがあり、本作のインタビューでは蜷川からアドバイスされた言葉をヒントに演じたことを明かしていた。
第1話の冒頭で、久部は蜷川になりきった様子でよくわからない持論を展開し、劇団員たちからは呆れられ、「お前のやり方じゃ誰もついてこない」と劇団の主宰・黒崎に言われると灰皿を投げようとするシーンもあった(蜷川幸雄は稽古中に灰皿を投げたという逸話がある)。普段は演出を受ける側の菅田が、演劇にかける久部の熱い情熱を丁寧に汲み取り、エネルギッシュに演じる姿に圧倒された。
■昭和の街を完全再現した美術セットが“もしがく”の世界へと没入させる
久部は劇団から追放された後、渋谷“八分坂”(架空の地名)にある怪しいアーケード街にやってくる。ストリップ小屋やスナックなどのネオンが光り、雀荘やジャズ喫茶も並んでいて昭和感満載だ。本作の三谷のインタビューでは「20代の頃、渋谷のストリップ劇場でアルバイトをしていた」と語っている。オープンセットに作られたという八分坂のアーケード街はとてもリアルで、おそらく当時彼が実際に見た光景に近いのだろう。
ストリップ小屋やスナック、ジャズ喫茶の内装も凝っていて、ギラギラした照明とステージを囲むように置かれた客席、ミラーボール、レトロなソファーやテーブルなどが昭和の世界に没入させてくれる。
本作では登場人物たちがタバコを吸うシーンが頻繁に登場するが、昭和が舞台だからこそ何の違和感も抱かずに観られるのもおもしろい。ほかにもストリップダンサーたちが妖艶に踊るシーンもあり、“コンプライアンスなど知るか!”と言わんばかりに攻めた作品作りをしているところに本作の本気を感じた。
■三谷作品好きにはたまらない豪華キャストによるドタバタ青春群像劇
三谷作品といえば、映画「THE 有頂天ホテル」や「ザ・マジックアワー」など、登場人物たちが次々とハプニングやトラブルに巻き込まれ、あらゆるシーンに伏線が盛り込まれ、観る側のテンションがどんどん上がってきたところで最高のクライマックスを迎えるものが非常に目立つ。
本作は、ひょんなことから久部がストリップ小屋WS劇場の照明係として働くことになり、その後ストリップ小屋を閉めることを知った久部は、演劇を上演してWS劇場を立て直したいと支配人に提案するという怒涛の展開が描かれる。
芝居経験のないリカ(二階堂ふみ)やパトラ(アンミカ)らダンサー、お笑いコンビ「コントオブキングス」の彗星フォルモン(バイきんぐ・西村瑞樹)と王子はるお(ラバーガール・大水洋介)、劇場の用心棒トニー(市原隼人)らに、シェイクスピアの「夏の夜の夢」を演じさせるという無謀な挑戦をする久部。
案の定、最初は久部の演出についていけず、本読みも全員がグダグダだったが、やる気を一切見せなかったトニーがセリフを覚えていたシーンから観る側もグッとギアが入った感覚があった。
そして第3話の終盤、立ち稽古でキレてしまったフォルモンに対して、「あなたみたいな体の大きな人が、奥さんの尻に敷かれてる感じが欲しかった」と、久部がキャスティングの理由を明かし、さらにお笑いでツッコミを担当している彼に対して「気付いてないかもしれないけど、たまに見せる悲しそうな顔がとてもいい。ひどい目に遭った方が絶対おもしろいと思う」と熱く語ったシーンがとても良い。この言葉をきっかけに、フォルモンは自分の役割を把握し、やる気になるという流れにもワクワクした。
久部は舞台の幕が開くまで、一体どうやって彼らを演出していくのか。最終話までじっくりと楽しみたいと思う。
■文/アンチェイン

