女性ホルモンによるメンタル不調の対処法
編集部
症状がつらいときは、どこに相談すればいいですか?
渡辺先生
婦人科または心療内科のどちらでも相談できます。近年は「女性外来」や「更年期外来」など、ホルモンとメンタルの両方を診る専門外来も増えています。1人で苦しまず、早めに受診することで症状の悪化を予防できるでしょう。
編集部
自然に改善することはないのでしょうか?
渡辺先生
女性の生涯は、ホルモンバランスの変化とともに進むようなものなので、何年にもわたって不調を抱えたまま過ごしてしまう人も少なくありません。それなら少しでも早く相談してもらった人が、治療が必要かどうかもすぐに判断できますし、漢方薬や西洋薬など、その人に合った処方を検討することができます。放っておいて自然によくなるケースは少ないので、迷っているなら早めに医療機関を受診した方が安心だと思いますよ。
編集部
治療法はありますか?
渡辺先生
症状に応じて、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬などが使われます。重度でなければ、生活習慣の改善だけでも軽快することもあります。
編集部
日常生活でできる対策はありますか?
渡辺先生
基本になるのは、生活習慣を整えることです。しっかり睡眠をとって、栄養バランスの良い食事を心がけ、そして軽い運動やストレスを発散できる時間を持つことが大切ですね。
編集部
ほかにも、自分でできることはありますか?
渡辺先生
個人的には、「アロマ」をおすすめしたいです。嗅覚は脳全体にダイレクトに働きかけるので、自分の好きな香りをかいでリラックスするだけでも気分が落ち着きますよ。また、「半身浴」もリラックス効果が高いのでおすすめです。加えて、「有酸素運動」はセロトニンの分泌を促してくれるので、気分の安定にもつながります。ただし、無理をしないことが大切で、疲れを感じたらしっかり休むようにしてくださいね。
編集部
「自分はダメだ」など気分が落ち込んだときには、どう立ち直ればいいですか?
渡辺先生
実際、「お風呂に入れなかった、自分はダメだ。人としてあり得ない……」など、自分で自分を責めてしまう人は意外と多いのではないでしょうか。でも、疲れているときは、そのまま寝ちゃってもいいんです。大事なのは、自分を許してあげることです。完璧じゃなくても大丈夫なんです。
編集部
パートナーや家族に理解してもらうには、どうしたらいいですか?
渡辺先生
ホルモンの影響で起こる心の変化は、目に見えにくいからこそ、自分でもコントロールできなくてつらいと思います。そのため、パートナーや家族には「つらいんだ」と素直に言葉にすることが大事だと思います。そして、受診したときに先生からどんなアドバイスをもらったか、治療でどんなことを始めたかなども共有するのもおすすめです。治療を続けていくうちに、パートナーや家族から「前より落ち着いてきたんじゃない?」などと言われれば、自分で変化を実感できます。1人で抱え込まないことが大事です。つらさを言葉にして誰かに伝えることで、気持ちがグッと楽になることもあると思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
渡辺先生
女性はホルモンに振り回される時期が男性よりも長いので、どうしようもない部分があるのは確かです。性別や立場の違いから、パートナーや家族にはなかなか理解してもらえない部分も多いと思います。しかし最近では、男性に生理のつらさを実感してもらうための体験型ワークショップなども開催されているので、パートナーや家族を誘ってみると、周囲につらさを理解してもらう助けになるかもしれません。また、妊婦さんのつらさを理解してもらうため、男性に20kgの重りを背負って歩いてもらうというのも手だと思います。お互いの立場になってみることで、理解が深まることも多いので、ぜひそうした機会を増やしてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
男性と比べて、女性はホルモン変動に左右される期間が長く、心身への影響も大きいものです。性差ゆえの理解の難しさはありますが、互いに立場を想像し合うことで、少しずつ共感や支え合いが生まれます。困っていることがあれば早めに医師に相談し、解決の糸口を見つけてみましょう。

