主人公・さゆりのパート先にいるお局従業員・鈴木さんは、相手が誰であっても構わず自分の理論を振りかざして攻撃する人。ある日、人手不足のパート先にヘルプの従業員がやってきますが、そこでも騒ぎが起きてしまい…。
自分の非を認めない
おつぼねの悪口のターゲットは、店内のメンバーに留まらない。ある日、どうしてもシフトに入れる従業員が少ないために他店の応援メンバーさんがヘルプで来てくれる日があったが、おつぼねはその人たちに対しても冷ややかなのだ。
「ちょっと、あのヘルプ、手際が悪すぎて使えないわ~」
おつぼねは、そう言って同僚に同意を求める。もちろん、誰もが内心では不快に思っているが、おつぼねの機嫌を損ねるのを恐れて曖昧に笑うか、適当に相槌を打つしかできない。
そのとき、鈴木さんがお局だと知らないヘルプの従業員が、なんと鈴木さんに声をかけた。
「鈴木さん、そのやり方では効率が悪くないですか?本社から教わっている方法と違うと思うんですけど」
ヘルプの方がおつぼねに注意をしたのだ。心なしか店が、シン…と気まずい空気に包まれた。私からしたら、応援に来てくださるヘルプの方が、よっぽど気が利くし、仕事も丁寧で早い。それに、ヘルプの方が言っている業務に対する意見は、間違いなく正論だ。
しかし、おつぼねはそんな指摘には動じない上に、自分が間違っていようとも指摘には大反発する。
「この店にはこの店のルールがあるんですよ。部外者は引っ込んでて」
ヘルプの方はそれ以上つっこんだらヤバいと思ったのか、言い返すことはせず仕事に戻っていた。
「あり得ない。応援に来てくれた方にまで、そんなこと言うなんて…」
私は心の中で何度も毒づいた。こんな職場で働いていて、精神衛生にいいはずがない。
権力ですべてをねじ伏せられる
実は、私も過去におつぼねと何度か衝突したことがある。数年前、お客様の導線に関わる配置について、私が効率と安全性の観点から意見を出した時のことだ。
「鈴木さん、その棚の配置だと、お客様が角でぶつかる危険がありますし、レジまでの流れも悪いです。こっちに移動させませんか?」
私の言葉を聞いた瞬間、おつぼねの顔からサッと表情が消えた。
「は?あなたが意見するところなの?昔から、当時の社員さんの指示でこうしてるのよ。いちいちパートが口を出すんじゃないわよ」
彼女の放った冷たい言葉が、私の胸に深く刺さった。鈴木さんが言っている「当時の社員さん」というのはもうこの店にはいないし、何年もたてばお店のレイアウトだって変わるのが当然なのに、頭ごなしにねじ伏せてくるのだ。
あのときから鈴木さんへの苦手意識が強くて、当時はシフトがかぶっていなくても、シフト表でおつぼねの名前を見るだけで気分が悪くなるくらいだった。

