【西洋美術vs日本美術】絵画の権威を破壊した「わかりやすさ」―写実主義と写生画の台頭

美術を見るために知識は必要か?

西洋美術vs日本美術20エドゥアール・マネ《オランピア》, Public domain, via Wikimedia Commons.

社会の変化にともなって、美術は権力者のものから民衆のものへと変化しました。それに伴い、人気を集める絵画の傾向も変化。現実離れした絵より、現実に即した絵の方がわかりやすく、民衆の共感を得やすかったようです。

西洋美術では写実主義の画家たちが、日本美術では写生画の画家たちが、絵画で現実を表現しました。西洋と日本という離れた場所で、似たような力学で美術に変化があったことは、興味深くはないでしょうか?

西洋美術vs日本美術21伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》(右隻), Public domain, via Wikimedia Commons.

ここで冒頭を振り返ってみたいのですが、

「絵画を楽しむには、知識が必要」

と、よく言われる話をしました。難しい絵よりもわかりやすい絵に人気が集中するのは、現代だけでなく昔からそうだったんです。たしかに、高度な読解が不要で感覚や共感で楽しめる作品は、古今東西にたくさん存在します。

ただし、わかりやすい絵だけを見て終わらないでほしいな、とも思います。机に向かうタイプの勉強はしなくていいので、美術館で気になったキーワードを調べてみるとか。

西洋美術vs日本美術22ジャン=フランソワ・ミレー《晩鐘》, Public domain, via Wikimedia Commons.

少しの雑学や面白い小ネタが身についたら、もう一度「わかりやすい絵」に戻ってみてください。そうすると、写実主義や写生画の画家たちが何と戦っていたのかも、彼らの本当の凄みは何なのかも、見えてくるのではないでしょうか。

多くの人は、楽しくなる前に学ぶことをやめてしまいます。あと少しだけ踏ん張れれば、美術を見る喜びは一層大きなものになります。さらにもう少しだけ踏ん張れれば、もっと楽しくなるんです。

「わかりやすい絵」も「わかりにくい絵」も、知れば知るほど面白く見ることができます。当サイト、イロハニアートはその手助けになると思うので、ぜひ他の記事も読んでみてくださいね。

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