急性胃炎の治療
急性胃炎の発症を認める場合には、原因を取り除き、食事療法や状態に応じた薬物療法が考慮されます。
薬剤による急性胃炎は一般的に原因が明確な疾患であるため、まずは原因となる薬剤の内服を中止します。感染症が疑われる場合には感染症を治療します。
また、急性胃炎では、潰瘍ができたり出血したりしているケースもあります。そのため、薬物療法では、一般的に胃液などの攻撃因子の分泌を抑える薬剤と、胃粘膜を保護する薬剤が併用して用いられます。
使用する薬剤には、ヒスタミン H2 受容体拮抗薬(H2ブロッカー)やプロトンポンプ阻害薬(プロトンポンプインヒビター:PPI)、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)、胃粘膜保護薬などが挙げられます。重症の場合や胃の中に出血を認める場合などは、入院し絶飲食として点滴治療が行われることもあります。
この他、アニサキス寄生虫によって急性胃炎を発症している場合には、薬物療法に加えて内視鏡でアニサキスを除去する処置が行われます。
急性胃炎になりやすい人・予防の方法
暴飲暴食や刺激物の摂取、食生活の乱れ、精神的ストレスは急性胃炎の原因になることがあります。そのため、生活習慣が乱れていたりストレスが蓄積したりしている人は急性胃炎を発症しやすくなります。
急性胃炎の発症を予防するためには、暴飲暴食やアルコール・カフェインを含む刺激物の過剰摂取を避け、生活習慣を整えることが重要です。ストレスを溜めないよう、こまめに休息を取ったり、十分な睡眠時間を確保したりすることも効果的です。
また、副腎皮質ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬などの薬剤を内服している場合にも急性胃炎を発症することがあります。何らかの薬剤を内服して異変を感じた時には、速やかに医療機関を受診しましょう。
急性胃炎の原因の一つであるヘリコバクター・ピロリ菌は、家庭内で親から子供へと感染します。保護者がヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合には、医療機関で適切な治療を受けるとともに、子どもへの口移しなどを避けるよう注意しましょう。
また、急性胃炎を引き起こすアニサキスの虫体は、生のイカやサバ、サーモン、アジ、サンマ、イワシ、カツオなどに含まれていることがあります。加熱する際は中心部まで十分に加熱して食べるようにしましょう。アニサキスは肉眼で確認できることもあるため、魚類の調理時にアニサキスが付着していないか確認することも可能です。
このほか、中枢神経疾患や心筋梗塞など何らかの全身性疾患がある場合には、急性胃炎などの二次的な疾患を発症するリスクがあります。急性胃炎の併発を避けるためにも、早期に適切な治療を受けることが重要です。
関連する病気
ヘリコバクター
ピロリ菌感染
薬の副作用
慢性胃炎アニサキス症
十二指腸潰瘍食中毒中枢神経疾患
心筋梗塞アレルギー参考文献
日本内科学会雑誌第81巻第3号「3.急性胃炎の診断と治療」
日本内科学会雑誌106巻10号「胃炎を見直す-胃炎の病態を理解し、正しく分類し、適切な対処を行うために-」
厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
日本内科学会雑誌第86巻第6号「消化性潰瘍:診断と治療の進歩1.病因2.防御因子の役割」
一般社団法人日本ヘリコバクター学会「ピロリ菌から胃を守れ慢性胃炎・胃がんの元を断つ」
内視鏡生検による急性胃炎の病理組織学的所見(第2報)治癒過程の経過観察に関する研究」

