「まず心理的な面では、読み聞かせは子どもに『心の安定』をもたらす効果があります。幼少期に人に愛された経験が、大人になってから心の安定に及ぼす影響は少なくありません。読み聞かせを通して親との信頼関係を多く積み重ねることにより、子どもは心の安定、さらには自己肯定の感覚を身につけることができるんです」
こう語るのは、NPO法人子育て学協会会長の山本直美さん。山本さんによると、読み聞かせの際に膝に乗せてもらう、親の声を近くで聞くなどのスキンシップを通じて、子どもは自分に愛される価値があることを実感できるのだそう。また、早期教育の面でも、読み聞かせの経験は大きな効果を発揮するという。
「絵本は、子どもが生まれながらに持つ様々な能力を効果的に引き出すツールになります。実は、絵本を多く読んでもらった子どもは、特に『想像力』『コミュニケーション力』『集中力』の3つの力が特に引き出される傾向があります。大人から見ても、成長を実感しやすいんです」(山本さん 以下同)

では、子どもの内面の力をより引き出す絵本の選び方って?
「重要なのは、年齢に合った絵本を選んであげること。あとは、その子の興味のある対象が登場する物語がオススメですね。例えば男の子なら車とか、女の子ならウサギとか。また、長すぎる作品は避けましょう。3歳児の集中力は約15分といわれていますので、7分~15分程度で読み切れるものがいいですよ」
また、意外なのが読んであげる際の声の出し方。キャラクターを演じるように読み聞かせるのがいいと思いがちだが…。
「役者さんのように、キャラクターごとに完璧に声を変えられるならいいのですが、中途半端に声色を変えるのは逆効果。ちょっとしたミスに子どもはすぐに気づき、集中力が途切れます。読む声は一定でOK。自分なりに想像しながら、キャラクター設定をする楽しさを子どもにさせてあげましょう」
子どもにとって、巡り合ったお気に入りの一冊は生涯の宝物。何度も繰り返し読んでとせがまれた絵本は、できるだけたくさん読んであげるようにしよう。その一冊が、子どもの大切な個性を磨く手助けになるはずだ。
(波多野友子+ノオト)