●気づかれていない“いじめ”は、さらに膨大にある
「いじめ事件が連続していることを受けて、文部科学省は今回の調査では“解決済み”の件数や、“これはいじめではないか?”という疑問符がつくような件数も報告することを求めました。実は、これまで学校では、“いじめゼロ”という学校目標が掲げられ、それ自体が学校の評価の対象となっていました。教師は副校長や校長に評価され、さらに校長や副校長は教育員会に査定され…。そうなると、“いじめゼロ”という報告を上げることがプラスになるわけです。こういったこれまでの姿勢を文部科学省が改めたということが増加の背景のひとつにあります」(増田先生 以下同)
しかし、こういった調査の背景のみならず、実際に“いじめ”自体が増加しているのも事実だという。
「この調査のタイトルからもわかるように、あくまでもこの件数は教師が“認知した”いじめの件数ですから、気づかない数はさらに膨大にあると考えられます」

●いじめなのか? いじめじゃないのか? わかりにくくなっているのが特徴
特に、最近のいじめの特徴がいじめをよりわかりにくくさせていると、増田先生は指摘します。
「今のいじめは、非常にわかりにくいのが特徴です。つまり、いじめなのか? いじめじゃないのか? の境目をうまく渡り歩いているケースが多いのです。被害者の子は、もちろんいじめと感じているのですが、加害者たちは“これはいじめじゃなくて、いじっているだけ。むしろ、いじってやっているんだ”という認識で自分たちのいじめを正当化してやっているので、周りからはわかりづらく、いっこうになくならないのです」
小学校高学年から中学校くらいになると、“帰属意識”が強くなるため、いじめから抜け出せなくなってしまうケースが多いそう。
「どこかの集団に属していたい、その集団に属してないと不安…そういった気持ちから、いじられている、いじめられているとわかっていても、結果的にはその場所で耐えながらやっていかざるをえない状況になってしまうのです」
