●人をいじめるという“子どものストレス”はなかなかのもの
「子どもは何かしらのストレスがない限り、人をいじめることはしないはずなのです。動物もそうですが、鶏を狭いところに入れると、必ず突き合いが始まります。広いところにいればそんなことにはなりません。いじめる子の心のなかには、いじめに至るきついストレスがあるのではないかと推測します。例えば、家で体罰を振るわれている、学校で先生から理不尽な扱いをうけるなどです。中井先生は“家庭と学校はいじめを子どもに教える塾のようなもの”と指摘しています。いじめっ子は被害者でもあります。親や先生が“いじめに走るだけのストレス”が何なのかを理解し、そのストレスを取り除くことが、子どもの反省と更生につながります」
「あなたみたいないい子がなぜそんなことしたの?」の一言で救われた子どももいるという。
「ストレスという名の荷物を背負いきれなくなった子どもは、万引きをしたりいじめをしたりと問題行動を起こしますが、それは彼らなりのSOSです。非行に走ったある娘さんは、父親の世間体からの叱責に失望しますが、“あなたみたいに良さそうな子がなんでこんなことしたの?”の少年係の警察官の一言に救われたといいます」
最後にふじもり氏は、人間の真の強さについてこう説く。
「本来強さというものは、人を圧迫したり強い言い方ができるということではなく、ひとつは“自分は自分のままでいいと思える強さ”であり、もうひとつは“友だちなど、周りの人たちの尊厳を必ず守ることができる強さ”なのではないかと僕は考えます。難しいことではありますが、親であれば、誤った強さを子どもに教えてしまわないように心がけたいものです」
ママが“強さ”の意味をはき違えると、「いじめられても立ち向かいなさい!」となりがち。だがそれは、親として、最もやってはいけないことのひとつなのかもしれない。本当に教えたいのは、人の尊厳を守る強さ…。これさえしっかりと根づかせておけば、いじめはもちろんのこと、わが子が将来、誤った道に進む可能性はグンと低くなりそうだ。
(取材・文/吉富慶子)
