学力と睡眠の関係
睡眠は、学力とも密接に関係していると言われています。2014年の厚労省「健康づくりのための睡眠指針」では、遅い就寝・起床などの不規則な生活が、学校の成績の低さと関係していると指摘しています。また広島県教育委員会が小学5年生の国語と算数の試験結果と睡眠時間の関係について調査したところ、睡眠時間が5時間以下の子どもと9時間以上の子どもの試験結果に20点近くもの差がついたとしています。
広島県教育委員会「『基礎・基本』定着状況調査報告書」(2013年)
※小学5年生の国語と算数の試験結果と睡眠時間について調査

脳への影響
睡眠は、全身の司令塔である「脳」を休ませる大切な時間。脳は睡眠でしか休息をとれないと言われています。
神経細胞が集まった脳では、身体の各部位からの情報を処理し、信号を出すことで全身をコントロールしています。定期的に休ませてあげないと、働きが鈍くなり、故障してしまいます。
故障とは、正常な精神を保ったり、身体の動きや健康状態の維持をしたりすることができなくなるということです。寝不足の状態が続くと、特に大脳の前頭連合野が打撃を受け、意識・集中力・学習能力や記憶力の低下を招きます。また脳の疲れが積み重なることで、心への影響も現れ、うつ病や生活習慣病、肥満といった病気の発症リスクも高くなります。
さらに子どもの場合は、睡眠中に脳内の神経ネットワークを形成しています。睡眠不足が続けば、脳の発達にも悪影響が及んでしまいます。また、常に眠たい状態では、集中力を欠き、何をしていても体験や経験が残らない、体験・経験不足の子どもになってしまう危険もあるのです。
レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠には、身体を休ませる「レム睡眠」と、大脳を休ませる「ノンレム睡眠」の2種類があり、寝ている間これらを交互に繰り返しています。レム睡眠の間に、人間の脳は情報処理して記憶を定着させますが、レム睡眠は朝方に多いのが特徴です。つまり、睡眠が不足するとレム睡眠から削られてしまい、記憶したことが定着しにくくなってしまうのです。
成長ホルモン
また、ノンレム睡眠時は、大脳を休めているとともに、身体の成長にとって重要な「成長ホルモン」の分泌が促されます。このホルモンは、21時~23時に体内で作られ、特に22時~2時にかけて多量に分泌されます。そして細胞の修復や育成、骨・筋肉の発達などの身体の成長と、脳内の神経ネットワークの発達など脳の成長に関与しています。そのため、この時間は眠りの「ゴールデンタイム」と呼ばれています。子どもの成長を考えると、遅くとも成長ホルモンが多く分泌され始める22時までに入眠することがポイントです。
海馬
海馬は、勉強などで得た新しいことを記憶する大切な領域です。脳の中で唯一、大人になってからも細胞分裂を繰り返すと言い、そのサイズが睡眠の長さで変わってしまう恐れがあります。
4歳児に必要な睡眠時間
「米国睡眠医学会」によると、年齢ごとの適切な睡眠時間は以下の通りとされています(昼寝を含む)。睡眠時間については様々な見解がありますが、日本でも4歳児に必要だといわれる睡眠時間は10時間~13時間とされており、米国睡眠医学会のデータと一致しています。

4歳児は午前中に保育園や幼稚園に通いだし、身体も大きくなるため夜中に起きることがなくなってきます。ただし、いつでも寝かせれば良いというわけではありません。先述の「ゴールデンタイム」に沿った睡眠が大切です。
