夫の上司・日下部さんの紹介で仕事が決まり、ゆうかは離婚を決意。慰謝料と養育費も確保し、娘と新しい生活を始めることになりました。
強くなろうと決意
日下部さんと会ってから、私の心に小さな変化が生まれた。このままではいけない。穂希のために、私は強くならなければ。
日下部さんが「何か力になれることがあれば」と言って紹介してくれたのは、日下部さんの知り合いが経営する転職エージェントだった。
「ゆうかさんのキャリアプラン、一緒に考えましょう」
担当の女性は、私の話を熱心に聞いてくれた。専業主婦期間が長かった私にとって、社会復帰は大きな不安だったけれど、彼女の力強い言葉に背中を押された。そして、驚くほど順調に、私は新しい仕事を見つけることができたのだ。
「穂希、ママね、お仕事するんだよ」
「そうなの?ママ、すごいね!がんばって!」
娘のうれしそうな顔を見て、心がじんわりと温かくなる。夫と舞子のことを考えると、いまだに怒りと悲しみで心が引き裂かれそうになるけれど、私はもう、彼らに囚われない。穂希のために、前だけを見て生きると決めたのだ。
離婚に悔いはない
「基樹さん、離婚しましょう」
その言葉は、私自身が驚くほど、冷静に口から出た。基樹は意外な顔をしたが、最終的にはあっさりと同意した。むしろ、どこかホッとしたような、喜んでいるようにすら見えた。その態度に、最後の憎しみが込み上げてきたけれど、もう私には関係ない。
慰謝料は、舞子からきっちりもらった。相場よりだいぶ高い金額を提示したが「いいですよ。すぐ払い込みます」と即答で送金されてきた。いかに自分がノーダメージであるかを見せつけたかったんだろう。
基樹とは養育費について取り決め、毎月きっちり支払われることになった。舞子は基樹とまだ続いていることをアピールしたかったのか「もし養育費を踏み倒したら、訴えてもいいですよ。まあ、私が立て替えるから大丈夫ですけどね」と、まるで私を煽るかのように言い放った。
舞子のきつい言葉も、今の私にはプライドが高い女のつまらない意地に感じられた。

