
俳優・アーティストである、のん主演の新ドラマ「MISS KING/ミス・キング」(ABEMA、全8話)が9月29日(月)夜8:00より無料配信が始まる。主人公・国見飛鳥が天才棋士の父親への深い憎しみから将棋の才能を開花させ、どん底に落ちた自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ。復讐心を充満させ怒りのエネルギーを燃やす主人公だけに、のんが初めての“ダークヒーロー”役に挑戦するとして話題だ。これまで個性的なキャラクターを多数演じてきたのん。視聴者の印象に残る代表作から現在見られる作品までを紹介していく。
■久慈市のHPに専用ページも!唯一無二の存在感を放つマルチプレイヤー
俳優、音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動するのんは、1993年生まれ、兵庫県出身の32歳。個性豊かな人々が集う芸能界において、のんのような存在感を放つマルチプレイヤーはひと握りだ。彼女のイメージは、いつからか多方面に「全力な人」。その証拠に、のん公式Instagram(@non_kamo_ne)をのぞいて見ると、顔の表情をはじめ、髪型から服の雰囲気、写真のテイストや色味まで、どれも見事にバラバラで、毎日違う彼女がそこに写し出されているようだ。何かの役を演じているのか、音楽活動中の一コマなのか、オフショットなのかという判別が実につきにくい。どれもがのん本人であるし、逆にすべてが創作活動のひとつのようにも見え、1人で何百種類もの人生を同時に生きているような魅力を感じる女性である。
そう感じさせるのは、着実に積み重ねてきたキャリアの色濃さからだろう。脚本家・宮藤官九郎が東日本大震災を描いた主演作、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で、女優・能年玲奈(のち、2016年“のん”に改名)は一気に知名度を獲得。2013年の「ユーキャン新語・流行語大賞」では主人公の女子高生・アキが驚いたり戸惑ったときに発するセリフ「じぇじぇじぇ」が、年間大賞にも選ばれて一躍時の人となった。「あまちゃん」のロケ地、岩手県久慈市とのんの交流はそこから続いており、三陸鉄道を幾度も訪れたり、久慈市のHPには「のんさん×久慈」という専用ページが設けてあるほどだ。
■不良少女も、さかなクンも代表作に
2014年8月には、紡木たくによる少女漫画の名作「ホットロード」の実写映画に主演。14歳の少女・和希が不良少年の春山(登坂広臣)と出会う物語で、尾崎豊の歌う主題歌「OH MY LITTLE GIRL」が流れる中、ピュアさと反抗心が入り混じる和希の感情を繊細に演じた。のんのほわっとした穏やかなしゃべり方は声の仕事でも光る。こうの史代の同名漫画をアニメ化したロングヒット映画「この世界の片隅に」(2016年公開)で、のんは主人公・すずを演じ、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した。戦争前後の広島や呉に住む人々の暮らしや心が描かれた作品。世の中が少しずつ戦争へと向かっていくリアルさが描かれており、完成披露試写会でのんは「どんな時でも生きていかなくっちゃいけなくて、それがすごく怖くて。だからこそ普段の生活が素晴らしく思える作品です」と、声優初挑戦作品について語っている。
のちに魚類学者でタレントになっていく“さかなクン”の半生を描いた映画「さかなのこ」(2022年公開)も大きな話題に。のんが性別の垣根を越えて演じたお魚大好きな主人公・ミー坊と、他の子どもとちょっと違うミー坊の圧倒的な“好き”の気持ちを応援し続ける母・ミチコ(井川遥)の愛情たっぷりな関係性が感動を呼んだ。
■「新幹線大爆破」では運転士役を好演
俳優・のんの一番印象的な代表作が何になるのかは、もし、視聴者やファンが決めても票が割れるかもしれない。それほど、彼女が残してきた作品や、歩んできた道のりは大きく広がりを見せている。さらに、現在配信中の作品もこんなにある。
Netflixで配信中の草彅剛主演「新幹線大爆破」で、のんは運転士・松本千花役で出演中。「時速100km以下になると爆発する爆弾を仕掛けた」と脅迫を受けた東京行きはやぶさの車内で、乗員乗客の命を預かる松本は、“停車も許されない”中で重要な選択を迫られる。1分1秒を争う状況で松本が持ち前の強い意志と機転を活かし、真剣な眼差しで列車を操る姿がクール。
DMM TVで配信中のアクションコメディ「幸せカナコの殺し屋生活」では、ブラック企業を辞めてホワイトな“殺し屋”企業に飛び込んだ主人公・カナコを演じる。まさかの殺し屋としての才能が開花したカナコと、基本「殺すぞ」しか言わない相棒・桜井(藤ヶ谷太輔)、ぶっ飛んだ指示を飛ばす社長(渡部篤郎)らによるテンポ抜群のコメディは、まさにのんのハマり役だ。
4月27日にTBSで放送された「キャスター」第3話にも、のんは万能細胞を発見する若手研究員・篠宮楓役で出演した。U-NEXT、Netflixで現在配信中。のんにとって11年ぶりの民放ドラマ出演、主演の阿部寛とは12年ぶりの共演ということで、ファンにも感慨深い出演話となったことだろう。
■飛鳥は憎しみを抱いた父親への復讐で将棋の世界に飛び込む
冒頭で触れた「MISS KING/ミス・キング」に話を戻そう。あらすじは…天才棋士・彰一(中村獅童)のもとに生まれた飛鳥(のん)は、母と3人、仲睦まじい幼少期を送っていたが、ある時彰一が2人を捨てて出ていってしまう。飛鳥は母と貧しい生活を送り、やがて母も病で他界してしまう。一方、飛鳥を見捨てた彰一は将棋界で成功を収め、脚光を浴びていた。その姿に殺意が芽生え、復讐を試みる飛鳥だが、その場で図らずも将棋の才能を発揮。飛鳥の才能を見抜いた、元棋士の藤堂(藤木直人)から、彰一に対して因縁の過去を持っており、共に「将棋で復讐をしよう」と持ちかけられる。飛鳥は復讐計画の一つとして、藤堂の指導のもと「史上初の女性棋士」を目指しながら、強者たちがひしめく、将棋という伝統と実力の世界で人生を取り戻していく物語。
「MISS KING/ミス・キング」予告編やシーンカットで見られる飛鳥はどれも、復讐に燃える冷たい瞳が印象的。黒い服に身を包んだまさに“ダーク”な一面を味わうことができそう。ケラケラと笑う元気いっぱいな役も、しっとりと穏やかな空気感のほんわかとした役でも、変幻自在に自分のモノにしていくのん。毎回、仕事や今やりたいことを「全力」に取り組んでいる人だけが放つ、自信に満ちたオーラを感じる創作家だ。


